国際情報発信プラットフォーム・東京フォーラム
「情報化社会のリーダー役を果たす女性と外国人」
宮尾尊弘(GLOCOM主幹研究員)
去る10月16日に、国際大学GLOCOMと国際交流基金が、日米協会との共催およびジャパンタイムズの後援で、国際会議「情報化社会のリーダー役を果たす女性と外国人」を、国際交流基金国際会議場で開催した。参加者は、男性、女性、外国人を含む非常に幅広い層の方々で、170ほど用意した席がすべて埋まるほどの盛況であった。
まず開会に当たって、国際交流基金の藤井宏昭理事長より、日本にとって今後とも女性と外国人の役割が重要になるので、この問題を十分に議論する必要があるという趣旨の挨拶があった
第1部「情報化社会におけるリーダーとしての女性」
第1部の「情報化社会におけるリーダーとしての女性」では、シカゴ大学の社会学者サスキア・サッセン教授が基調講演を行った。その中で、サッセン教授は、サイバー空間が女性の活動の領域を広げ、女性が新しいリーダーとして活躍できる分野として、一つは新しいビジネスの起業があるが、もう一つは、世界中の女性がそれぞれの生活の場所で直面している困難さについての情報交換や相互支援を行うことで、グローバルな政治的力をもってくる可能性であるという点を強調した。
これを受けて、以下のパネリストにサッセン教授が加わり、筆者司会による討論を行った。
アイヌール・ウーナル(米国E2open技術担当チーフ)、レベッカ・リョング(香港・アジア・インスティネット事務局長)、大河原愛子(JCフーズネット会長)、石井俊成(GLOCOM客員研究員)。
主要な発言の要旨は以下の通り。
ウーナル:ITの分野での女性の進出と活躍はまだ十分ではなく、望ましい変化をもたらすためには教育に焦点を当てる必要がある。シリコンバレーの企業などがリーダーシップを発揮して、世界中の政府や教育機関をネットワーク化して、女性のための教育プログラムや講座を開設してはどうか。
リョング:自分が仕事をしてきた経験からいって、もはや女性を制約しているものは何もない。日本にも何度も来て仕事をしているが、とくに自分が女性であるからといって不利な立場になったことはない。男女を問わずビジネスで成功するには、適切な態度、経験、教育、自信、努力などが必要である。
大河原:自分がビジネスを始めた60年代は、日本は男性中心の大企業の時代であったが、それは現在でもあまり変わっていないようにみえる。ただし、日本では女性が財布の紐を握っており、また女性が i モードを開発する時代になった昨今、女性を無視することはもはやできない。インターネットの時代は女性にとって新しい可能性が開ける時代であるが、すでに日本でも6万人の女性が自分のビジネスを持って活躍している。
石井:確かにITは女性に新しい機会を開くものであるが、しかしあくまで技術は技術にすぎない。特に日本では、女性が家事や子どもの教育に時間を割くことが当然という考え方がまだ支配的なので、女性の活動は制約されたままである。したがって、コミュニティに女性を支援するシステムを作っていく必要がある。
サッセン:起業の分野で女性に大きな機会が広がっていることは確かだが、見逃しがちなのが女性によってネットワークされた政治的な運動が起こることである。
大河原:日本で先日行われた参議院選挙で、主としてインターネットを使って選挙運動をした女性候補者は当選しなかった。有権者の多くには届かなかったようだ。一方、私が仲間と作った女性の候補者を支援する団体の活動は、女性知事を誕生させるなど、ある程度成功している。インターネットもさらに普及すればもっと効果を発揮するだろう。
第2部「グローバル化のもとでの外国人の重要性」
第2部では、「グローバル化のもとでの外国人の重要性」というテーマを取り上げた。まず、小林陽太郎富士ゼロックス会長が、「外国人を活かす知識社会構築に向けて」と題する基調講演を行った。その要旨は以下の通り。
並外れて均質な日本社会から新しい知識を創り出して、今後の知識社会に適合したシステムへと日本を変えていくためには、異なる背景や視点を持つ外国人の役割が重要になる。それには外国人を積極的に受け入れるとともに、日本人にも外国人にも通用するビジョンが必要となる。さらに知識だけでなく、英知に基づく恒久的な価値を創造するためには、リーダーには違いを尊重し、幅広い視野を持って価値判断できる人間が必要で、それには多様性を尊重する心、哲学そして歴史を育むためのリベラルアーツ教育を重視しなければならない。それによって、外国人とともに新しい知識を創造していく社会へと日本が変わることを期待する。この点、私は楽観している。
この基調講演を受けて、以下のパネリストがこのテーマについて討論を展開した(司会/筆者)。
ヴィニー・メータ(インド情報技術製造業協会ディレクター)、行天豊雄(国際通貨研究所所長)、グレン・フクシマ(ケイデンス・デザイン・システムズ社長)、馬越恵美子(東京純心女子大学教授)。
主要な発言の要旨は以下の通り。
メータ:インドがIT分野で多大な貢献をしていることは、よく知られている。特に米国の主要なIT関連組織では、インド人の技術者が欠かせない存在になっている。今後とも海外でインド人の技術者が需要されるであろうが、インド自身も、今後200万人以上の技術者を必要としている。この状況下では、それぞれの国は、技術者に対して新しい可能性を提供することが重要になる。
行天:グローバル化のもとでは、米国のようなオープンで競争的な社会が能力のある人を引きつける傾向を持つ。しかし9月11日以降、なぜ米国がこれほど憎悪の対照になるのかという疑問が米国内で生じている。今回の事件の教訓は、国内での努力だけでは不十分で、対外的にも自分の国がどのように映っているのか、また自分の国がどれほど価値があるかを明確にしていく必要がある。
フクシマ:グローバル化は労働力の流動性、多様性、専門性を高めるとともに、「外国人」という言葉の意味を薄れさせつつある。このような状況のもとでは、人的資源の重要性が増すので、有能な人材の獲得合戦が起こる。その成功例としては、世界中から優秀な学者や学生を集める米国の大学、ダイナミックな成長を遂げるシリコンバレー、世界で繁栄するグローバル企業などがある。そのなかで、外国人の重要性は増しているが、その言葉の意味は薄れていくであろう。
馬越:自分が行った調査研究によれば、グローバルな企業の場合に、本社と海外支店の間にはあまり意識の差がなく、むしろ同じ国の中における本社と地方支店の間の意識の差の方が大きい。いまや企業文化の差の方が、国の文化の差よりも重要な要因になりつつある。日本の問題は、外国人や女性のキャリアが十分確立されておらず、すべての従業員に対して「等距離」の経営がなされていないことにある。これはグローバル化時代には、大きな問題である。
行天:今後、日本は移民を受け入れざるを得ないが、その際に自分たちで調和と秩序を維持する社会的な力を持つ必要がある。日本にとって、多民族・多文化社会の利益とともにリスクも受け入れる挑戦が、まさに始まろうとしている。
総括的コメントと閉会の辞
閉会の前に、GLOCOMの公文俊平所長より総括的なコメントがあり、「このフォーラムでは、新しい時代における女性と外国人に役割について有意義な議論が展開されたが、このような問題を語るときに、日本社会は決して近代文明から独立したものでなく、それを担う一員であることを自覚することの重要さと、それと同時に日本に特有の問題点を認識することも大切である」と指摘された。
最後に、日米協会の大河原良雄理事長より、グローバル化のなかでわれわれが真剣に考えるべき諸問題が取り上げられた有意義なフォーラムであったという趣旨の挨拶があり、フォーラムは閉会した。
引き続き同会場でレセプションがあり、パネリストと参加者の間で熱心な意見交換が行われた。