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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

く・も・ん・通・信

 最近の米国での議論をみていると、通信政策をめぐる論調が明らかに変化しつつあります。1990年代のあの強気と楽観論は影をひそめ、むしろ米国は“ブロードバンド”と“無線通信”の分野では、他のいくつかの国々の後塵を拝している、いまや米国は“テレコム暗黒時代”ないし“インターネット反革命”の時代に入ったのではないかといった議論が台頭してきているのです。

 とくにひどいのは、無線用の周波数再配分の失敗です。1998年に倒産したネクスト・ウェーブ社が手放さずにいた多数の免許を「市場に戻そう」とするパウエルFCC(連邦通信委員会)委員長の試みは、議会がそれを許す立法化を行わなかったことで、失敗に終わりました。軍用周波数の明け渡し問題も、あのテロ事件以降、軍のきっぱりした拒絶にあって頓挫しています。そこで、もとFCC職員で、現在はエスター・ダイソンの発行するニュースレターRelease 1.0の主筆として健筆を振るっているケビン・ワーバックは、FCC委員たちに公開状を送って、周波数を共同利用せよという“革命的”な提案を行い、多くの注目を集めていますが、それが採用される可能性はまずなさそうです。

 しかし、今日の無線技術の動向からみれば、ケビンの提案はまことに理に適っています。いずれはそういう時代がくるでしょう。日本でも、なるべく早くその方向に進みたいものです。私は、周波数や、より広くは“ライト・オブ・ウェー”一般を、いったん社会的管理下に移し、適切な共同利用のルールを作れ、と主張する政党が各国に生まれてもいいと思います。

 有線通信の分野でも、通信網の全光化は遠い将来に先送りされてしまいました。問題は、これまで“FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)”などと呼ばれてきた、いわゆる“ラストマイル”の光化ですが、当分はそれはもう言わないで、既存の銅の電話線を使ったDSLや同軸ケーブルを使ったケーブルモデムなどの“ミドルバンド”を“ブロードバンド”と称して、それでしのいでいこうとしています。

 こうした動向を批判する声も、もちろんあちこちにみられます。デービッド・アイゼンバーグは、いまや通信技術の革新のために事実上無価値となった銅線や電話交換機のことは忘れて、“ファーストマイル”から出発する、インターネット型の通信に最適化された光(と無線)のネットワークを一から構築していくことが重要だと言っています。しかし、地域独占体は、それを理解しようとしない。その結果、米国の情報革命は途中で挫折してしまい、経済は出口の見えない不況に入り込んだというのです。

 それでは、誰が新しいネットワークを構築するのでしょう。シンクタンクのフェニックス・センターは、最近出した政策文書の中で、光通信パイプの構築とリースだけに専念する新しいタイプの“ローカルなキャリアのキャリア”――彼らはそれをADCO: Alternative Distribution Companyと呼んでいます――の設立を推進すべきだと提言しています。

 また全米研究評議会は、最近のレポートの中で、DSLやケーブルモデムだけでなく多様なブロードバンド・サービスを、“設備にもとづく競争”を可能にする形で展開させる必要を強調しています。しかも、地域により事情は大きく異なるところから、それを市場だけにまかせておくのでは不十分で、政府の関与が必要になる。たとえば連邦政府は、地方政府の計画に資金を出したり、パイロット・プログラムを支援したりするのがよい。地方政府は光ファイバーを入れるコンディット(conduit)を広汎に建設するための公共事業を興すのもよいだろう。それは都市が、地域の商業振興のために道路を建設し、維持したのと同じことだ。また、地方の公共機関は、コミュニティや地域の諸組織と共働してブロードバンドへの需要や利用を喚起するとよいだろう、などと論じています。

 というわけで、少なくとも議論のレベルでは、米国にも新しい風が吹きはじめました。しかもその内容は、さまざまな面で、私どもの年来の主張と似通っています。相互の共働の中から新しいシナジーが生まれることを期待しましょう。

公文俊平

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