ワシントンDCの食事情
土屋大洋(GLOCOM主任研究員/ジョージ・ワシントン大学サイバースペース政策研究所訪問研究員)
以前にも書いたが、ワシントンD.C.はどちらかというと田舎っぽい。もちろんアメリカの首都なのだが、東京や北京と比べると人口も面積もとても小さい。
ワシントンD.C.が他の首都とさらに違うのは、経済活動の規模が小さいということである。東京は日本の政治活動の拠点でもあり、経済活動の拠点でもある。さらには文化の拠点とも言っていい。したがって、いろいろな職業、立場の人が混ざり合って住んでいる。
しかし、ワシントンに住んでいる人には、大雑把に言うと三つのグループしかない。第一のグループは政治にかかわる人たちである。政治家とそのスタッフ、政府機関で働く人々、政府にアイデアを提供するシンクタンクや大学、その予備軍としてのインターンや学生である。こうした人々はアメリカ全土からやってくるエリートにほかならない。
第二のグループは、第一のグループにサービスを提供する人たちである。アパートやホテル、レストラン、商店で働く人たちや、ビルの清掃・メンテナンスに従事する人々である。このグループでは、圧倒的にスペイン語を話す人が多い。もちろん英語を話せる人もいるが、彼らの間の会話ではスペイン語になる。
この二つのグループに彩りを添えているのが、第三のグループ、つまり外国人である。世界各国からの大使やそのスタッフはもちろん、留学生や観光客もいる。
そうした人々のニーズに応えるべく、外国料理のレストランも数多い。イタリア料理、フランス料理、中華料理などの定番はもちろん、アフガニスタン料理、ギリシャ料理、ベトナム料理、インド料理、レバノン料理などもある。
「SUSHI」はすでに市民権を獲得していて、いろいろなところにある。中華料理のレストランの中に、握り寿司のカウンターがあることもある。ただし、本格的な日本料理店に行かない限り、質はそれほど高くない。私が所属するジョージ・ワシントン大学の学生が、「ジョージ・ワシントン大学のカフェのSUSHIはワシントンで一番だ」というので言ってみると、カリフォルニア・ロール(アボガドととびこの巻物)ばかりだった。本当の寿司がどういうものか知らない人も多い。
日本料理の食材は、ちょっと高い日本食材店に行くか、韓国食材店に行けば手に入る。韓国食材店はなぜか幅を利かせていて、そこかしこにある。5年間アメリカに滞在している友人の分析によると、韓国の人々は韓国料理以外の料理を食べたがらないからではないか、ということだ。ともかく、韓国食材店に行けば新鮮なネギや白菜などのほか、日本語がプリントされたあらゆるものが手に入る。
しかし、近所のスーパーや韓国食材店でも手に入りにくいのが新鮮な魚だ。見たことがない魚や、どう見ても目がよどんでいる魚しか置いていないことが多い。テラピアというピラニアのような魚や、サーモン、コイなどがよく置かれている。
新鮮な魚介類がどうしても欲しくなったときは、ポトマック川沿いのフィッシュ・マーケットに出かけることにしている。ここには比較的新鮮な魚介類が山ほど積まれていて、若干安い。魚はどうやら大西洋からポトマック川をさかのぼって運ばれてくるようだ。名物のブルー・クラブや牡蠣、海老、巨大なアサリやロブスターが手に入る。サメの半身がどんと置いてあることもある。牡蠣は殻付きで50個20ドル(約1,300円)である。
ここでブルー・クラブを買う時は、半ダースや1ダース単位で買うのだが、帰宅して袋を開けてみるといつも必ず5割増しぐらいで入っている。アメリカ人のいい加減さもこういうときはいいものだと思ってしまう。