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途上国のデジタル・デバイド解消に向けた日本のイニシアチブ アーネスト・ウィルソン教授(GLOCOMフェロー)インタビュー

土屋大洋(GLOCOM主任研究員/ジョージ・ワシントン大学サイバースペース政策研究所訪問研究員)

 ワシントンD.C.から北へボルチモアまで続くボルチモア・ワシントン・パークウェイ。パークウェイとは「両側や中央分離帯に樹木や芝生を植えた大通り」という意味で、一種の高速道路のような作りだ。秋には紅葉で美しいこの道を20分ほど走ると、カレッジ・パークの出口に着く。ここから一般道を10分弱走ったところにメリーランド大学はある。

 メリーランド大学は広大な敷地を持つ州立の総合大学で、キャンパス内にあらゆる施設が揃っている。キャンパスの中心にあるモール(木陰のある遊歩道の意)は学生の憩いの場だ。キャンパス内の建物は赤い煉瓦と白い縁取りで統一されている。

 モールに面するタイディングス・ホールという建物の一階東部分を占めるのが、国際開発紛争管理センター(CIDCM)のオフィスである。所長のアーネスト・ウィルソン教授は、国際政治経済学やアフリカ政治などを専門とするが、情報通信と国際関係についても研究を行っている。ウィルソン教授はGLOCOMフェローでもある。

 この日、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の大学院生たちがウィルソン教授を訪問し、途上国に対する情報技術(IT)支援に関するインタビューを行った。

 ウィルソン教授は、アメリカ政府のDOTフォースに関する諮問委員会のメンバーも務めている。DOTフォースとは、2000年のG8九州・沖縄サミットにおけるIT憲章を受けて成立したタスク・フォースである。G8各国から政府代表、民間企業代表、NPO代表が参加するほか、国際機関やいくつかの途上国の代表も参加し、課題解決に向けた議論を行っている(ちなみに公文俊平GLOCOM所長は日本のNPO代表であり、会津泉、アダム・ピーク両GLOCOM主幹研究員と共に積極的に議論に参加している)。

 ウィルソン教授は、DOTフォースの重要性は、政府代表、民間企業代表、NPO代表が揃って参加したことにあると指摘する。これまで国際問題を議論する枠組みは政府間において設定されてきた。しかし、ITの世界は民間部門の役割が重要であり、さらにはNPOの役割も重要になりつつある。この三者は一国内では実りある対話がしにくい。しかし、国際的な舞台に三者を同時に引っ張り出したことで、問題解決の可能性が高くなったと評価する。

 さらに、「ITが重要なのだ」ということを日本政府が世界に宣言したことは、各国政府の考えを改めるのに大きな貢献をしたという。加えて日本独自の途上国IT支援(150億ドル)を発表したことによって、各国政府も何かをしなくてはならないと考えるようになってきている。

 しかし、ウィルソン教授にとっての謎は、「なぜ日本がこのようなことを言い出したのか」ということだという。日本はNPOやNGOを支援する文化がないと思っていたのに、突然このようなことを言い出した理由は何なのか、それをぜひ明らかにしてほしい、と若い研究者の卵たちに宿題を出した。

 この宿題は彼らだけに向けられたものではない。われわれはこれにどう答えるのだろうか。日本が世界に新しいアジェンダを提示した。では、次に日本は何をしようとしているのだろうか。

●DOTフォースのホームページ<http://www.dotforce.org/>

●DOTフォースNPO日本委員会のホームページ
 <http://www.glocom.ac.jp/dotforce/>