DSL導入!
土屋大洋(GLOCOM主任研究員/ジョージ・ワシントン大学サイバースペース政策研究所訪問研究員)
アメリカに来てから、はや9カ月。いっこうに進まなかったことがある。ブロードバンド導入である。最初に入ったアパート(日本でいう賃貸マンション)は1カ月半の短期契約だった。ケーブル・テレビ会社がケーブル・インターネット1カ月間無料キャンペーンをやっていたので、しめしめと思ってウェブから申し込んだのだが音沙汰ない。そのころは、申し込めば必ず返事が来るものという「日本的」メンタリティを引きずっていたので、何もしないうちに引っ越しすることになった。
次に入ったアパートは、契約前の下見の時に、「ブロードバンドは入れられる?」と聞いておいた。「廊下までケーブル・テレビのケーブルが来ているからすぐに入るわよ」との言葉だった。信じたのが馬鹿だった。
入居したのは8月の中旬。8月末から2週間ほど西海岸へ行く予定だったので、帰ってきてから申し込めばいいと考えて何もしないでおいた。しかし、9月11日の事件でなかなかワシントンD.C.に戻ることができず、その後も炭疽菌やら何やらで申し込みそびれていた。
9月末になって、これではいかんとケーブル・テレビ会社に申し込みをし直した。それまでは地上波しか見ていなかったのだが、ついでにケーブル・テレビも入れてもらった。テレビの配線工事はすぐ翌日にやってきた。配線工事をしている人に、「インターネットも一緒に申し込んだんだけど」というと、「そのうち来ると思うよ」という。部門が違うと何も知らないらしい。その後、いつまでたっても来ないので、電子メールや電話で催促するが、「わかった」というものの、音沙汰なし。
このケーブル・テレビ会社はサービスが悪いことで有名らしいので、DSLにしようと思い立ち、地域電話会社やその他のサービス・プロバイダーのホームページで片っ端から調べてみたが、私の住んでいるところはサービス対象外。
「何でアメリカに来てダイヤルアップしなくちゃいかんのだ?」と憤慨しながらも、半ば諦め気味だった10月末、衛星放送の会社からDSL勧誘の電話がかかってきた。天の救いと思って「すぐ入れてくれ」と頼む。「3週間待ってくれ。手続きの後、DSLモデムを送るから」という。期待して待っていたのだが、1カ月経っても来ない。もういい加減にエネルギーを使うのが面倒になったので、このままダイヤルアップでいこうと心に決めた。
年が明けて2月末、地域電話会社からDSL勧誘の電話がかかってきた。「すぐに入れてちょうだい」と性懲りもなく頼む。「10日以内にモデムと、おまけのデジカメを送るから」という。
「どうせまた来ないんだろ」と思って忘れていると、「おおっ! 届いた!」。デジカメは届かないが(つくづくいい加減な人たちだ)、モデムは届いた。歓喜して繋いでみた。動かない。悲憤にくれて電話線を元に戻すと、「電話までつながらない!」。ダイヤル・トーンのツーという音がしなくなってしまったのだ。
二日間、執拗に電話会社に携帯電話で電話をかけ続け、ようやく40時間後に修理人が来てわかったことは、モジュラー・ジャックの老朽化による断線だった。確かに外してみると、プラスチックが割れていた。「偶然の一致ってやつだね。DSLとは関係ないよ」とのお言葉。
3月半ばにしてようやくつながったDSLのスピードは、公称で、下り786kbps、上り128kbpsだが、実際の下りは590〜730kbpsぐらい。ネット環境はだいぶ快適になったが、ほとほと長い道のりだった。