GLOCOM - Publication

Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

フーリガンとは何か

講師:大山隆太(トッテム・ホットスパー・サポーターズクラブ・ジャパン)
コメンテータ:広瀬一郎((株)スポーツ・ナビゲーション取締役)

 W杯を控え各種報道が盛んであるが、4月25日のIECPコロキウムではW杯で最も憂慮されているフーリガン問題に関し、イングランドの(裏)サッカー事情に詳しい大山隆太氏を迎え意見交換を行った。

 大山氏はまず、わが国におけるフーリガンに関する現状の認識・報道について、暴動が起き、商店や街の車がすべて破壊されるといった、偏った見方が支配的であることに強い危惧を表明した。われわれは「イングランド・サポーター=フーリガンである」と、勘違いしてはいないだろうか。たとえば誤解される行動の典型として、彼ら(大男揃いで、入れ墨やスキンヘッドも多い)が昼間から外でビールを飲み、集団で応援歌を歌い、騒ぐ行為があるが、これはフーリガンではなくても、イングランドでは日常的に見られる光景なのだという。

 真のフーリガンは、サッカーファン全体の1%程度に過ぎない。彼らは右翼の影響を受けた人種差別・対外排斥主義を唱え、他国(チーム)ファンを襲撃する等の暴力行動を80年代に繰り返したが、英国政府が1990年のテイラー・レポートに基づき、スタジアム・セキュリティを中心に徹底的な対策を講じた結果、英国内のスタジアム内において、1993年のプレミアリーグ開幕以後は深刻な暴動は発生していない。

 しかしスタジアム外では、前回のフランス大会も含め、引き続きフーリガンによる騒ぎが起こっているのも事実である。ここで注意すべきは、真のフーリガンは1%しか存在しないが、彼らの煽動で、少なからぬ数の一般ファンが暴徒に「豹変する」ことである。その背景には警察の過剰な警備やマスコミ(特にTVカメラを見て彼らは増長する)の存在があると、大山氏は指摘した。

 まとめると、大山氏の講演のポイントは以下の3点であろう;

  1. サッカーファンの大多数はフーリガンではない。
  2. 過剰な警備、杓子定規な行政の対応、マスコミの存在がフーリガンに火をつける。
  3. 解決へのカギは市民がさまざまな場面で示す「ホスピタリティ」である。

 後半はこれらの点をめぐって討論が行われた。コメンテータの広瀬一郎氏は、「W杯は、諏訪御柱大祭のようなお祭りなのであり、警備・運営側にはサッカー(文化)を理解したうえでの『大人の対応』、つまり過剰反応せず、大目に見る態度が求められる」ことを、メキシコ・イタリアの両W杯の運営に携わった経験から述べた。さらにホスピタリティに関して、現在外国人ファンと市民が共に楽しむ「場」がほとんどないことを指摘し、その必要性を訴えた。

 この指摘はきわめて重要である。迎える側にホスピタリティが欠けており、さらには偏見すらある現状では、結果的に各国のサッカーファンにきわめて悪い印象を与えるだろう。これは、間違いなくわが国の国益を損する。

 われわれがすべきことは簡単だ。外国人のファンに出会ったら、その国のスター選手の名前を連呼して褒めたり、一緒にサッカーをすればよいのだ。警備体制の強化や場の提供も重要だが、われわれ自身が勇気を持って示すホスピタリティの積み重ねこそが、フーリガン対策の最大の武器なのである。

澁川修一(GLOCOMリサーチアソシエイト)

[ Publications TOP ]