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智場、GLOCOM Review、コラム…


 

ファミリーマートのE-Retail戦略

講師:井上史郎(株式会社ファミマ・ドット・コム代表取締役社長)

 コンビニエンスストアの棚は、狭い店舗からは想像できないほどの豊富な商品で溢れている。雑誌や書籍、旅行チケットなどを除いた商品の種類は3千点を超える。また、コンビニは、モノとしての商品を陳列するだけでなく、マルチメディア端末によるサービスの提供にも積極的に乗り出している。コンビニは我われの社会のありようを、とりわけ情報化という流れを強く映し出す鏡だと言ってよいだろう。

 4月19日に行われたIECP研究会では、株式会社ファミマ・ドット・コム代表取締役社長の井上史郎氏をお招きし、「ファミリーマートのE-Retail戦略」というテーマで、ファミリーマートの電子商取引(EC)への取り組みについてご講演いただいた。

 井上社長によれば、コンビニは、強いブランド力をもつこと、顧客層が20代から30代に集中していること、在庫をもたない物流システムを採用していること、宅配の受け渡しや代金収納などの機能を店頭で提供していることなどの理由から、総じてECに向いているという。このような条件を生かしながらも、ファミリーマートのEC事業は、あくまで店舗を中心としながら、周辺のチャンネルを取り込むという中核的なコンセプトのもと、リアルの店舗と、インターネット、携帯、マルチメディア端末などが相互に融合した「E-Retail」を目指している。

 店頭マルチメディア端末の導入など、情報技術の導入に積極的なコンビニ業界は、インターネット上でオンラインショップを提供するという点では、各社ほぼ横並びの状態だったと井上社長は述べる。しかし、多くのコンビニのオンライン店舗が、一種の「インターネット支店」として運営されているのに対して、ファミリーマートでは、リアルの店舗一つひとつがインターネット上にバーチャル店舗を出店する仕組みを採り入れている。この「ECフランチャイズシステム」はファミリーマート独自のシステムであり、現在、ビジネスモデル特許を取得するなど、同社のオンラインショップを特徴づけるものとなっている。

 同社は、バーチャルな店舗展開に加えて、リアル店舗でも利用できる購買ポイントと結びつけたファミマクラブと呼ばれる会員制度を同時に提供している。

 10代と20代がコンビニ顧客の60パーセントを占めるといわれるが、他の年代と比べると彼らの購買力は高くない。このため、これまでコンビニの経営では「売れる」商品を打ち出すためのマーケティングと商品企画が、非常に重要な意味をもってきた。しかし、EC、顧客会員制度、リアル店舗などを組み合わせ、本当の意味でのone-to-oneマーケティングを実現することで、統計的手法に基づく傾向調査よりも正確な顧客の購買パターンを知ることができるようになったという。

 ファミリーマートは「顧客のニーズに対応した最良の選択と購買体験を提供する」ことをコンセプトとしているが、井上社長の講演は、同社が、まさにその目標に向けて情報技術を非常にバランスよく活用していることを強く印象づけるものであった。

上村圭介(GLOCOM主任研究員)

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