く・も・ん・通・信
GLOCOMでは、今年度以降の活動の主要な柱の一つを“地域情報化”とすることにしました。当面は、地域情報化をめぐる過去の動きの整理や、基本的コンセプトの理論的検討、総合的なビジョンづくりといった情報収集や分析に力を入れ、しだいに具体的な実践活動の領域にも踏み込んでいきたいと考えています。
そのために、まず“地域情報化研究会”を立ち上げ、月2回の定例会のほかに、ワーキング・グループによる個別テーマの掘り下げや、ウェブ・サイトの整備などを始めました。定例会には毎回十数人の研究員が参加して、活発な議論を交わしています。また丸田一主幹研究員をリーダーとするワーキング・グループは、「ブロードバンド化政策がもたらす地方暗黒時代」というテーマで集中的研究を行い、このほどアウトプットの最初のバージョン(パワーポイント版)を発表したところですが、さらに推敲を加えて文章化を行う予定です。
私も毎回の議論に楽しく参加しています。そこであらためて痛感しているのは、地域情報化をめぐっては、“グローバル・パス”ともいうべき、東京・国・大企業主導の流れと、“グローカル・パス”ともいうべき、地方・自治体・地元企業/住民主導の流れが、交錯しているということです。もちろん、その規模や影響力、当面の成功度という面では、“e-Japan戦略”の一環として進められている前者の流れの方が、圧倒的に有力です。しかし、とくに西日本に顕著にみられる地方からの流れも、決して無視できません。
その二つの流れや両者の関係をどのように評価すべきか、研究会で新しい情報に接するたびに、私の気持ちは揺れ動きます。昨年のADSLの爆発的な普及開始は、結局のところ、下り重視、コンテントやサービスの一方的提供優先のグローバル・パスの流れの爆発でしかなく、これでは人材や情報や富の東京中心構造はますます拡大再生産されるだけではないかと、暗澹たる気持ちになることもあります。しかし、いくつもの地域が、“どっこい生きてる”とばかりに、新しい情報ハイウェーの建設や、その民間開放、あるいは地域iDCの構築などに取り組んでいる状況を知ると、いやいやグローカル・パスも捨てたものではないと思えてきます。そうかと思うと、この数年さまざまな地域で試みられてきた“地域IX”の建設と運用は、ほとんど無意味な試みにすぎなかったと聞かされると、やっぱりそうだったのかとため息がでます。ある時は地域情報ハイウェー、ある時は地域IX、ある時は地域iDCなどと、地域はその時々のキーワードを追っかけては空騒ぎをしているだけで、全体的なビジョンも計画もないと指摘されると、その通りかもしれないなという気になるのです。実際、圧倒的に多くのネットワーク・トラフィックが、私的にピアリングされた大手のISPの間をもっぱら流れていることは、現状では否定しようもありません。
しかし、それではグローカル・パスの上での未来への展望はないのでしょうか。もしも“情報化”が、もっとも本質的には人びとの“知的エンパワーメント”を意味し、これからの“智民”は、積極的に情報を探索し発信しつつ、さまざまなグループによるコミュニケーションやコラボレーションを進めていくのだとすれば、グローカル・パスは、今はほんのささやかな流れにすぎなくても、それは未来の大河の滔々たる流れにいたる源流なのだ、とあらためて思いなおしたくなります。そうすると、地域で奮闘しているネットワーク・エンジニアからの、「地域の実態は、今はまだ平均や統計数字ではとらえられない。むしろ個々の実例に注目してほしい」という訴えかけが、すとんと腑におちます。
もちろん私は、グローバル・パス優位の現実や、それが今日の情報社会との関係でもっている実際的な重要性を否定するものではありません。でも、それだけでは“面白くない”のです。GLOCOMとしては、それだけではない未来に賭けて、その実現をめざす努力を続けていきたいと思います。
公文俊平