GLOCOM - Publication

Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

Managing Digital Transformation: Achieving E-integration

―ウェブ・サービスを支える技術群―

講師:ラマヤ・クリシュナン(Ramayya KRISHNAN)(カーネギーメロン大学教授)

 5月28日のIECPコロキウムでは、カーネギーメロン大学(CMU)のラマヤ・クリシュナン教授をお招きして、「Managing Digital Transformation: Achieving E-integration」と題し、ウェブ・サービスとそれを支えるJavaベースの技術群について講演していただいた。

 筆者(中野)は、CMUのあるピッツバーグを2度訪れたことがある。川の合流点であることからThree Riversのニックネームで呼ばれることもあるこの町は、工業都市と大学都市の両方の性格を備える。鉄鋼王カーネギーから連想されるとおり、往時は鉄鋼の町として栄えていたが、その分野だけをみれば、1970年代から80年代にかけて、日本の鉄鋼に負けてさびれた。一方、大学都市としてのピッツバーグは非常に美しい。クリシュナン教授が強調したように、全米首位かそれに準じるというコンピュータ・サイエンス学科やその類の学科、全米2位のビジネス・スクールなどを擁するCMUや、CMUよりはずっと親しみやすい感じのピッツバーグ大学などが、公園のような緑の中に点在する。

 20年も前に、エンジニアリング・ワークステーションのThree Rivers(Perq)を生み出したことでもわかるように、CMUは広義のコンピュータ科学分野で全米屈指の力を誇る。慶應義塾大学理事の徳田英幸教授、同大学で生命情報科学分野を率いる富田勝教授などがCMUに籍を置いていたことがある。

 クリシュナン教授によると、90年代後半のハイパーリンクでつながれたウェブ・ページがWWWを生んだが、2001年以降の、互いにコミュニケーションし合うウェブ・サービスは、世界的規模のデジタル経済をもたらすという。そのキーとなるのが、(1)アプリケーション・サーバー・アーキテクチャ、(2)企業アプリケーション統合(EAI: Enterprise Application Integration)、(3)B2B(Business-to-Business)アプリケーション統合――の三つの概念である。

 (1)では、クライアントとサーバーとの関係、そして、アプリケーション・サーバーとビジネス論理や表現論理の関係について考える必要がある。前者では、サーバー主導で有線のシン・クライアント、クライアント主導で有線のフル・クライアント、無線(モバイル)の三つを念頭に置く。

 後者では、メッセージング、サービス、コミュニケーションなどの要素を持つアプリケーション・サーバーがビジネス論理、表現論理の層とやりとりしながら業務を遂行する必要がある。

 いずれにしても、Java2 Enterprise Edition(J2EE)によるAPI(Application Program Interface)、そして、Java Server Pages(JSP)*1およびJava Servlet*2、さらにEnterprise Java Beans(EJB)*3などを組み合わせて、前述(1)を構成する。

 (2)のEAIは、JMS(Java Messaging Service)APIやJTS(Java Transaction Service)APIなどを用いて、SRM(Supply Resource Management)、CRM(Customer Relationship Management)、ERP(Enterprise Resource Planning)といったシステムを有機的に結びつけるものである。

 (3)では、企業間取引の仕組みを、(2)などで登場する企業基幹システムと、インターネットを通じて連動させる。(3)では、XML(Extensible Markup Language)と、XMLベースのウェブ・サービスのキー技術であるSOAP(Simple Object Access Protocol)やUDDI(Universal Description, Discovery and Integration)がキーになる。

 以上見てきたように、組織内のサーバー、クライアント間と、ソフトウェア間では、Javaをベースにした種々の技術、企業間取引ではXMLをベースにした種々の技術が重要であり、CMUがそうした分野で高い技術を備え、枠組みづくりにおいて大きな役割を果たしているというのが、クリシュナン教授の結論である。

 最後に、個人的感想を付け加えたいと思う。(1)、(2)の実装においてJavaおよびJava周辺の技術を用いる必然性の説明が、足りない気がした。多分、レクチャーの時間の関係が大きかったのであろう。凝縮されたレクチャーを聞きながら、実装まできちんと見据えた実践性にピッツバーグで見た川面の青さを、全体が目指すところの志の高さにピッツバーグ大学の天を突く尖塔の高さを、それぞれ垣間見た気がした(CMUの方は日本の老舗の国立大学風で、広い敷地に低・中層の建物が点在する)。

中野 潔(GLOCOM主任研究員)

*1 Java Server Pages(JSP):クライアントからの要求を解釈し、Servlet上の必要なJava Bean(Javaによるソフト部品)を起動してウェブ・ページをダイナミックに構成する技術。

*2 Java Servlet:クライアント側のプログラムと、サーバーの後ろにあるデータベースや企業の基幹サービスとの間を取り持つ技術。

*3 Enterprise Java Beans(EJB):企業向けアプリケーション用に強化したJava Beans。

[ Publications TOP ]