IT社会と電子政府の推進
講師:前田泰宏(経済産業研究所官房企画課長補佐)
7月30日のIECP研究会では、経済産業省大臣官房の前田泰宏企画課長補佐をお招きして、「IT革命と電子政府の推進」と題し、電子政府、行政改革などに関するお話をうかがった。
突然話が飛ぶが、筆者(中野)が調べたところによると、GLOCOMの向かいにある桜田神社の旧名が霞山神社。神社の向こう側、現在の西麻布の旧町名が、麻布霞町である(霞町町内会という掲示板が今もある)。田宮虎彦の小説『絵本』では、この霞町が、主人公である苦学生が明け方までガリ版切りの内職をする下宿の場として描かれている。安宿の多い一帯だったようだ*1。一方、現在、住宅街のイメージからほど遠い霞が関が、江戸時代には黒田氏の大名屋敷*2、さらに以前には景勝地だったという。虎ノ門の西側から麻布台、六本木と連なる丘陵地両側の山の端に、「霞」の字が付いているのは、あながち偶然でもない。
働き詰めの書類作りの場と高級住宅地という対比関係が、霞町と霞が関との間で、いつの間にか逆転したことでわかるように、慣性の中で信じ込んでいる図式というのは、明治維新や敗戦という一種の革命のような変化を経ると、案外容易にひっくり返る。
前田氏によると、「明日の絵を作り、組織を取り巻く外部環境を分析し、必要項目にプライオリティを付け、優秀な人間をその順に張り付けて、業務として今日を破壊していく」という手法は結局、慣性に負けるのだという。現場現場が、肩書きに書かれていない自分を発揮して現状を破壊していくという手法によって、半歩ずつずれれば、変わるというのである。破壊すれば、創造は自然に生まれ、内在的仕組みで次のレベルに進むという。
電子政府の通則法案では、全部電子化できるものとし、電子化できないことを証明すれば例外として法律に示すとした。ここで、「電子化可能な手続きは?」と問うていたときには1万6,000だった電子化可能な手続きが、電子化できないことの証明責任を負わせたら、5万1,000になった。
進化の第1段階は、需要構造改革である。今までは、すべての書類を民間が用意して持ってこいといっていた。これを、行政が取りにいけるものは取りにいくものとした。
第2段階は、手続き革命である。手続きの標準を作ることや、改正する部分を連ねたものが法律改正の表示の「正」だとなっていたのを、改正後の完成した法律の姿の方を「正」として表示するようにすることなどである。
第3段階が、業務革命である。公務にはフロントオフィス(国民、市民との接点)、ミドルレイヤー(政策企画、推敲、調整など)、バックオフィス(庁内の会計事務など)がある。フロントでは、手続き革命で、束ねるか、止めるかする。ミドルでは、情報公開により、分析したい、企画したいという人を呼び寄せ、政策市場を形成する。ここでも情報を公開し、腐敗を防ぐ。バックでは、民営化、ASP(Application Service Provider)などを取り入れる。
第4段階が、自治体革命である。自治体の機能をアンバンドリングすれば、機能ごとに主体的に提携関係が組まれていくはずである。
第5段階が、NPO革命である。現在の自治体は、業界団体と同じで、中央からのお金の配分に対する圧力団体になっている。これでは自治の担い手にならないので、NPOを育成する。
これからは、デバイドの解消、均衡ある発展という建前を捨て、ばらけるほど、多様なほどいいという考え方に立たないといけない。特区とは、その体現である。
以上が前田氏の講演の概要である。最後の、「デバイド解消論の呪縛」という話は刺激的であった。
中野潔(GLOCOM主任研究員)