『わたし、日本に賭けてます』
講師:アレン・マイナー(株式会社サンブリッジ社長)
7月10日のIECP読書会では、(株)サンブリッジ社長のアレン・マイナー氏をお招きして、著書『わたし、日本に賭けてます。』をベースに、日本のベンチャー産業にかける想いについてお話しいただいた。日本のベンチャーキャピタル業界は米国に比べて遅れていると言われ、さらには景気の回復の遅れにより、日本経済に対するネガティブな評価が高まっている。そんななか、「わたし、日本に賭けてます。」というタイトルの本はいささか不思議ではあったが、著書を読み、そしてお話をうかがうと、日本もまだまだいけるのかもしれないという気がしてきた。
ベンチャーキャピタルは、投資先の株式公開時に得られるキャピタルゲインにより収益を得るのが一般的であるため、投機的なイメージがある。しかし、マイナー氏は、サンブリッジ社の業務を「ベンチャー・ハビタット」と称し、単に機械的に会社を作り出すのではなく、投資先のベンチャー企業が育ちやすい環境を提供するものだと説明した。起業家どうしが情報交換を行う場を提供し、また、ベンチャー企業の不足している力を補う企業や人を紹介して、企業として成り立っていくよう手助けをするのだという。マイナー氏は「ベンチャーキャピタルを行うのに大切なことは資金力ではなく、いかに多くの人を知っているか、そしてそれらの人々をつなげることができるかだ」と述べた。
マイナー氏によると、米国で新しくスタートする事業のうち、ベンチャーキャピタルの投資を得られるのは1割だという。そしていかに挑戦的な企業であっても、成功するのはそのうちの2パーセント程度だそうだ。それから、市場の活性化のためには、5年目のリターンが1〜2倍程度で生きながらえる企業よりも、それ以下のリターンしか生み出せずに倒産する企業が多いほうがいいと説明した。なぜなら、そこそこの伸びがあると現状に縛り付けられてしまうが、経営があまり芳しくない状態であれば、新たな資源の投入を試みたり、従業員たちが新たな道を模索するために別の会社を興して、次の投資機会を作ったりすることもあり得るからだそうだ。しかし、日本ではこのように理解されるのは難しいであろう。むしろ、企業を倒産させて次の投資機会を作るよりも、なるべく多くの企業を生きながらえさせる方向に行きがちだ。ベンチャー企業は高成長、高い可能性が期待できる一方、ハイリスクでもあるのに、安定性と持続を強く求めてしまうのでは、日本でのベンチャー企業の活躍が難しくなるのではないだろうか。
最後に、よく米国ナスダックと日本を比較して、「日本でベンチャー企業が育つのは難しいのでは……」と心配する声があるが、「それを判断するには早すぎる」とマイナー氏は述べた。米国ナスダックは日本よりもずっと先に始まっているのだから、現時点の結果を単純に比較するのは無理があるとのことだ。また、ベンチャー企業=ハイテク産業の新興企業というのは米国ナスダックの成功を見て生まれた思い込みであり、国も歴史も違う新しい株式市場でこのように定義づけをする必要はないとマイナー氏は続けた。日本ならではの得意分野もあるのだから、それを活かした日本型ベンチャーが見えてくるのはこれからだという。また、優秀な投資家が動くのは好景気のときより市場が今ひとつのときなので、今が日本にとってチャンスなのだそうだ。なぜなら、市場が冷え込んでいるときほど企業の実力がわかるので、投資家が動くからだという。
日本の市場もベンチャー産業によって活性化される可能性があるように思え、なんだか元気がでてきた。
日向和泉(GLOCOM主任研究員)