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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

く・も・ん・通・信

 今度、中央大学教授の大橋正和さんを座長として発足する、電子社会基盤高度活用研究会の顧問をお引き受けすることになり、その準備会に出席してきました。この研究会は、総務省など4省庁と、学界、産業界が協力して立ち上げた会で、e-Japan戦略が取りこぼしている問題のカバーを使命としています。準備会の進め方を拝見したところ、この会は、産学官の協力関係に立脚しつつも、とくに“学”のリーダーシップが強く発揮されるなかで、開発主義的な仕事の進め方が志向されているなという印象を受けました。

 そこでとくに強調されたのが、日本のネットワークは“中抜け”であって、その早急な是正が必要だという問題意識でした。つまり、日本には幹線用の光ファイバは豊富にある。またラストマイルのB2Cの部分では、ブロードバンド化が順調に展開しつつある。しかし、その中間の地域情報ネットワーク(とりわけB2BやG2Gにあたる部分)が、アメリカに比べると大きく立ち遅れていて、ここに余っているダークファイバをふんだんに活用する必要があるというのです。またこの部分の展開を、民間だけに任せておいたのでは足りないというのです。

 日本のこれまでの“iDC”(インターネット・データセンター)や“MAN”(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)のようなコンセプトは、もうすでに時代後れになっていて、いま必要なのは、複数サイト間の負荷分散や、高度なセキュリティ、災害からの回復機能などを受け持つ、アメリカの用語でいえば“アドバンスド・データセンター”とか“インテグレーテッド・データセンター”が中核となる地域情報ネットワークなのだという指摘もありました。また、アメリカでは6カ月で倍増するほどのスピードでのデータ量の爆発がすでに始まっていて、コンピューティング中心のシステムからストーレッジ中心のシステムへの移行がみられるが、そこではアプリケーションよりもデータマネジメントの方が重要になってくるとも言われました。

 つまり、ここにみられるのは、これまでのインターネットとは異質な、クローズドでマネージされたIPネットワークの急激な立ち上がりです。それが企業の電子商取引や政府の電子行政を支える基盤になるという認識です。

 私は、智民化しつつある勤労者の“フリー・エージェント”(ダニエル・ピンク)化も広汎に進行している現代社会では、上に指摘されているような“ビジネスIPネットワーク”だけではやはり足りず、それとゆるやかに結びついている市民・智民のためのオープンで自律分散協調的なファーストマイルの“シビルIPネットワーク”としてのインターネットが、それと並存する形で発展していくことが大切だと思います。後者が、現在のADSLやケーブルモデムのような上り・下り非対称のままで“ブロードバンド”化していったのでは、音楽や映画のような有料コンテント販売業はともかく、それ以外の産業や政府組織は、高度な“ビジネスIPネットワーク”をせっかく構築してみたところで、羽をもがれた鳥になってしまいかねません。

 それはともかく、この準備会での発表を聞いていて、私は目の鱗が一つとれた思いがしました。というのは、21世紀前半の“第三次産業革命”突破局面での主導産業は何かという問いに、やっと決定的な答が得られたように思われたからです。20世紀後半の出現局面での主導産業が“情報産業”だったのに対し、突破局面の主導産業は“通信産業”になるという期待は、もろくもはずれました。また、それに代わる産業として、情報家電や情報自動車をあげる日本の見方や、コンテント産業をあげるアメリカの見方にも、もう一つうなずけないものがあります。私のこれまでの答は、増田米二氏が提唱していた“(個人のための)機会開発産業”がそれになるというものでした。

 しかし、それはいささか性急にすぎたようです。どうやらその前に、企業や政府組織を対象とするビジネスIPネットワーク上での電子商取引や電子行政関連の各種サービスを提供する産業、いってみれば“組織のための機会開発産業”が、当面の主導産業になりそうです。

 そう考えると、第三次産業革命は、ちょうど第二次産業革命が全体としては“重化学工業革命”だったという特徴づけができるように、全体としては“情報産業革命”と呼ぶのがふさわしい産業革命になるといえそうです。そしてその出現局面(20世紀後半)では、情報技術がまずグローバルな金融サービスに応用され、突破局面(21世紀前半)では、それが企業や政府組織一般を支え、最後に成熟局面で個人や小グループにも利用されるようになっていくとみることができそうです。それはちょうど、第二次産業革命の出現局面(19世紀後半)では、重化学工業の技術がまず軍需産業に応用され、突破局面(20世紀前半)では耐久消費財産業に広がり、最後の成熟局面(20世紀後半)では一般大衆を対象とした各種のサービス産業でも利用されるようになっていったのと、軌を一にしているのではないでしょうか。

公文俊平

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