<日経デジタルコア三重合宿・報告>経済的な自立を誰が主導するのか
坪田知己(日本経済新聞社日経デジタルコア事務局代表幹事)
ITの健全な発展を議論するフォーラムである日経デジタルコアは、三重県の情報化推進団体の志摩サイバーベース推進協議会と、2002年11月22、23の両日、三重県津市で「e-Japanと地域情報化を考える三重合宿」を開催した。
インフラは整備されたが…
三重県側からは、北川正恭知事やCATVの経営者など、東京からは有識者、ビジネスマンなど、計100人を超す参加者が地域情報化の現状と課題を議論した。
県の後押しでCATVインターネットが全県的に整備されている三重県をはじめ、全国でインフラの整備が進んでいる。過疎地ではまだADSLのサービスが受けられない地域があるなど、格差は残っているが、かなりのピッチでインフラの問題は解消されつつある。
ところが、そのインフラが地域振興に役立っていない。
工業化は若者を都会に呼び寄せ、地方は過疎にあえいだ。情報化も同じ効果を生むのか、それとも、地域がその特色を活かしつつ「自立」できるのか――現在はその岐路にあるといえる。
インターネットの基本原理は「自律・分散・協調」である。工業化が推し進めた「他律・中央集中・管理」から脱却し、「自分のことは自分で決める」でなければ、あるべき未来は拓けない。そのためには、まず「自分で飯が食べられる」という経済的な自立の基盤を用意しなければならない。
プロデューサーは誰か
合宿の議論が盛り上がったのは、行政と住民の関係、そして情報化のリーダーは誰なのか――という問題だった。
北川知事は、「『県民を満足させる』という県行政が主語の発想ではなく、『県民が満足する』という県民が主役の発想が、私が就任してから進めた『生活者起点』の意味だ」と話した。
議論の前段でプレゼンテーションを行った福岡県や岡山県は自治体主導、富山インターネット市民塾は民間主導だ。
GLOCOMの会津泉氏は、「行政が産業政策に取り組むのは有効とは思えない」と疑問を投げかけたが、岐阜県情報技術顧問の神成淳司氏は「岐阜県の場合は、行政の枠組みにとらわれないで仕事を進めている」と反論した。
参加者の多くが指摘したのは、「結局、人財がいなければ進まない」という問題だった。特にプロデューサー役が焦点になった。志摩サイバーベース推進協議会の伊藤佳行氏は、「自分がやらなければ周りも変わらないとの意識が不可欠」とプロデューサー役の責任感を強調したが、会津氏は「プロデューサーは不要。強いて言えば皆がアクターであり、プロデューサー依存は地域の発展を阻害する」と述べた。
全体の雰囲気は「プロデューサーは必要」であり、「ときには行政がその役割を担う必要もあり、他の地域からスカウトすることも必要」((株)富士通の加藤幹之氏)という意見も出た。
足掛け2日の会議だったが、幅広く地域情報化の問題を取り上げたため、焦点を絞りきることができなかった。とはいえ、参加者の地域情報化への情熱は高かった。
プレゼンテーションでは、富山インターネット市民塾の取り組みと、神奈川県大和市の電子市民会議と地域通貨LOVESが関心を集めた。
1980年代のニューメディア・ブームは行政情報の伝達的な色彩が強かったが、インターネットは双方向の情報交換をベースにさまざまな可能性を持っており、多くの実践例も出始めている。
日経デジタルコアは、ホームページ<http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/>で三重合宿の概要を紹介するとともに、地域の実践例の紹介など、地域情報化に注視していく考えだ。