選考結果からみる学校ホームページの現状とは
――データから浮き彫りにされるホームページの位置づけと学校の今――
先月号より、「全日本小学校ホームページ大賞*1(通称:J-KIDS大賞)」の話題をお届けしている。先月の背景と問題意識に続いて、今月号では選考過程から得られたデータをもとに、学校ホームページの現状を明らかにしたい。まずは第1次選考の結果をもとに、統計から平均的なホームページ像を検討し*2、次に比較的活発に活動している学校ホームページを対象としたアンケート調査から、運用者の意識や課題を述べる*3。
■悉皆調査の選考過程
J-KIDS大賞の学校ホームページ選考過程は、大雑把に1)客観指標を用いた悉皆調査による県代表校の決定(49校)、2)選考委員・選考委員長によるベスト8以上の決定、の2段階に分けられる。今回GLOCOMでおもに担当したのは第1次の悉皆調査である。
選考のための客観指標づくりは、この大賞のポリシーを決定づけるうえで最も重要である。まず、児童・保護者をはじめとした幅広い利用者を想定し、ニーズに基づいた基準を作成した。さらに、重要度に応じて1〜3倍の傾斜配点を行った。多様な学校ホームページの個性が網羅できるよう、「T.基本(名称・住所等)」「U.教育(教育方針・研究等)」「V.運用(更新頻度・履歴等)」「W.広報(学校生活・作品等)」「X.機能(インタフェース・レイアウト等)」「Y.総合(利便性・差別化等)」の6尺度を構成し、合計によって順位を確定させる仕掛けとした*4。
今回の調査対象は、全国小学校および小学部をもつ併設校、私立学校、海外日本人学校、特殊教育諸学校等で、ホームページが閲覧可能な約1万2,000校である。統廃合・休校により学校自体が存続されていなくても、ホームページが継続運用されている場合は選考対象とした。
刻々と変化する大量の調査対象評定を短期間で行うために、社会人ボランティアを募集するとともに、ウェブサイトで評定対象検索、評定入力のすべてが行えるようシステム構築を行った。各学校ホームページをすべて閲覧しながらの評定はかなり大変な作業であるが、オンラインであれば場所や時間を問わない気軽さも手伝って、最終的に約500名の方の協力を得ることができた。
■一般的な学校ホームページの傾向
有効な評定数は1万1,810件であった。合計点はほぼ正規分布となったが、満点156点に対して100点以上得点した学校はわずか19校、80点以上でも324校に過ぎず、平均は41.37にとどまっている点は特徴的である(図1)。コンテストを目的とした調査のため、各学校の個性や差別化を際立たせるための項目や配点が影響しているものと思われる。

図1 合計点の分布
次に各客観評定基準*5について、条件を簡素化し(×以外はすべて○とみなす)、通過率7割・3割水準で3領域(概ね条件を満たす、条件達成は中程度、ほとんど満たさない)に分け、平均的ホームページの要素を割り出した(表1)。

表1 基準通過率からみる平均的内容水準
概ね条件を満たす項目では、トップページに掲載されるべき形式情報が多い。また、ホームページの機能として基本的な背景文字色バランスやメニュー構造も、一応備えられていることがわかる。
条件達成が中程度の項目では、教育方針・沿革・校歌・行事予定などの形式情報と、ホームページユーザーが注目する、新着情報・お知らせ、学年学級ページ・活動記録などが含まれている。
ほとんど条件を満たさない項目と比べてみると、条件を満たした項目は学校要覧に掲載される形式情報が大半であり、しかも学校側教師側から提供されるものに限られている。日常的な教育活動が把握できるような詳細情報、教材資料として再利用可能な蓄積情報、児童や保護者の情報発信活動への関与はみられない。
すなわち、平均的ホームページでは、体裁は整えられており、従来学校側が提供してきた形式情報とともに、ホームページの速報性を活かした項目も一応設けられているが(頻繁に更新されているかどうかは問わない)、学校での具体的活動の詳細や過去情報を知るためには、ほとんど役割を果たさないことが明らかである。
■活発に活動するホームページの運用状況
比較的活発にホームページ運用を行う学校は、どのような課題や展望を持っているのだろうか。学校ホームページ運用者の意識を明らかにするため、第1次選考過程が終了した後でオンラインアンケートを実施した。調査項目は、事前に各都道府県代表校(49校)に対する記述式調査を行い、この結果を整理したうえで9項目とした。対象は、各都道府県および特殊教育諸学校・在外日本人教育機関の49カテゴリの総合点上位2〜10位にあたる学校(県優秀校)約440校である。
■アンケート回答校のプロフィール
回答総数は224件で、今回の調査対象の約半数から回答を得たことになる。各学校のホームページ開設年度は「不明」(59件・26.3%)を除くと2000〜2002年が最も多く、3年間の合計で全体の45.9%を占める(図2)。つまり約半数は、設置されてから4年以内の比較的新しい学校ホームページである。

図2 回答校のホームページ開設年
■ホームページ運用のための体制
学校ホームページ運用のための組織や分掌としては(図3)、有効回答中(179件)、「広報委員会や情報教育部等の運用組織がある」(22.3%)、「校内分掌で担当者を決めている」(53.6%)、「明確な取り決めがない」(24.0%)であった。ホームページの運営形態(複数回答あり・回答数179)では(図4)、「ほとんど1人で行っている」(57.5%)が最も多く、「複数で分担」はその次(46.4%)である。「業者委託」(2件)や「外部協力者」(12件)は少数である。

図3 運用のための組織や分掌の存在

図4 ホームページの運営形態
学校のホームページ運用は、頻繁な更新の必要性や情報量の多さからみても、個人で負担可能な程度には限界があり、規模が大きくなるほど組織的運用が必要である。校内分掌とは、ホームページ運用が校務として位置づけられていることを示す。つまり、学校ホームページは7割以上の学校で公式に認められている。一方で、「明確な取り決めがなく、ほとんど1人で運営」しているケースは、学校からの情報発信を実質個人に委ねていることから、組織側の対応としては明らかに問題がある。
■教育実践活動におけるネットワーク利用
教育実践活動におけるネットワーク利用用途(複数回答)としては(図5)、「児童の調べ学習」(97.8%)、「教育関連情報収集」(86.0%)、「授業準備」(78.1%)、「授業でのインターネット教育コンテンツ利用」(72.5%)が上位を占めるのに対し、「学習成果発表」(55.6%)、「ネチケット・情報モラル」(30.3%)、「交流型学習」(27.0%)、「e-learning」(17.4%)はそれほど多くない。

図5 教育実践活動でのネットワーク利用
上位を占める利用方法は、いずれも外部の情報リソースを利用するタイプである。とくに児童の調べ学習は、手軽さもあってほぼ定着している。学習成果発表や交流型学習は、手間は多くかかるものの、学校ホームページのコンテンツの充実にも直接つながる方法として注目できる。
■注目や認識を高めるための工夫
学校ホームページの注目度認識度を高めるための工夫(複数回答)としては(図6)、「児童の学校生活の様子を掲載」(94.0%)が最も多い。ホームページコンテンツとしてはそのほかに、「児童作品や学習成果」(65.2%)、「学校便り」(51.6%)、「地域情報・歴史」(43.5%)となっている。一方、ホームページの紹介方法としては「印刷広報物での紹介」(70.1%)、「行事(懇談会等)や会議の際に紹介」(47.3%)が目立って多い。このことから、学校ホームページへの注目を高めるには、まず、学校生活の様子が把握できる情報の掲載が最重要と考えられており、また、ホームページの存在を広めるために、印刷広報物や行事等での紹介が大きな役割を果たしていることがわかる。

図6 注目や認識を高める工夫
■ホームページ運用上の課題と工夫
ホームページ運用上の課題(複数回答)としては(図7)、「時間的負担が過大である」(68.7%)、「後任者の不足」(49.7%)、「内容のマンネリ化」(40.2%)、「法的規制への配慮」(31.8%)、「技術的知識の不足」(29.6%)、「周囲の関心理解不足」(11.7%)、「運用承認決済が煩雑」(11.2%)であった。その他の指摘としては、「サーバの割り当て容量不足」(4件)、「忙しすぎる」(5件)などがあげられている。

図7 ホームページ運用上の課題
ちなみに、2001年に行われた学校ホームページ運用者調査*6でも同様の質問が設定されているが、結果にはそれほど大きな差異がみられない。すなわち、急激な学校ホームページの普及にもかかわらず、学校側の運用環境としては大きな変化がなく、課題がそのまま持ち越されていることを示すものである。
ホームページ運用課題に対する工夫(複数回答)としては(図8)、「教員向け研修会」(58.7%)、「定期的更新が可能なページ構成」(46.5%)、「運用担当者の設置」(44.2%)、「ページごとの分担を決める」(36.6%)、「更新を簡単にするシステム構築や共通フォームの作成」(15.7%)となった。その他の工夫としては、「校内文書のPDF化・HTML化掲載」、「職員からデジカメやコンテンツ素材の提供を求める」などの方法があげられている。

図8 運用課題に対する工夫
先の質問で、運用をほとんど1人で行っているケースが57.5%であることを前提とすれば、運用担当者にかかる過大な負担や後継者・分担可能人材の不足は、学校ホームページが直面する最も深刻な課題である。対処の方法として、学校内での啓蒙活動以外に実質的合理的な問題解決が積極的に模索されている点にも注目したい。
■利用者からの感想や要望
利用者からはどのような感想や要望が寄せられているのか。自由記述で得られた代表的回答を以下に示す。利用者からは好意的評価がもたらされているとともに、大きな期待が寄せられていることがわかる。
- 学校や児童の様子がよくわかる(62件)
件数の多さからも、学校生活を詳細に伝えることが最も評価されていることがわかる。保護者にとって、学校での子供の様子は参観日以外、直接目に触れる機会がないが、ホームページが情報の乖離を埋める重要な役割を果たし、家族の話題を提供したり、親子の絆を強めたりといったメリットをもたらしている。
- 学校が懐かしい(30件)
卒業生や転校生にとって、母校は何かにつけて個人の重要な思い出の対象であり、ホームページがそのよりどころとしての役割を持っていることがわかる。
- 更新が頻繁でよい、もっと更新して(20件)
学校ホームページの重要性と更新頻度は相関関係にあり、更新が頻繁かつ定期的に行われることで、学校への信頼度や期待・関心も高くなることがうかがえる。
- 読み応えがある・参考になる(11件)
- 様子がすぐわかる(11件)
- 楽しみにしている(11件)
- 感想・問い合わせが寄せられる(10件)
- 行事予定がわかる(7件)
- 応援してくれる(7件)
■今後注力したいこと
ホームページ運用者が今後注力したいのはどのようなことか。自由記述回答で代表的な事項を示す。さまざまな点が比較的偏りなく指摘されているが、なかでも更新にかかわる項目は合計48件と最も多い。次いで、「保護者や地域との協働」(26件)、「負担軽減への工夫・校内啓発」(22件)となっている。
- タイムリーな更新(16件)
- 更新頻度の向上(15件)
- 継続的定期的更新(11件)
- 学年学級の更新バラつきをなくす(6件)
- 保護者・地域との協働(26件)
- 負担軽減への工夫・校内啓発(22件)
- 教育活動への理解向上(14件)
- 学校生活・活動の紹介(14件)
- 学習成果・児童作品活動の紹介(11件)
- 技術的問題解決(11件)
- 個人情報への配慮(11件)
- コンテンツの充実(9件)
- 構成デザイン管理上の工夫(8件)
- 児童からの情報発信(8件)
- 対象を意識した情報提供(8件)
- 教育研究・教材の充実(7件)
■まとめ
2003年時点の小学校ホームページの状況をまとめると、平均的ホームページでは、一応の体裁は整えられているが、具体的な学校生活をタイムリーに発信するには至っていない。一方で、活発なホームページは、日々の教育実践の様子をこまめに発信することによって、利用者(おもに保護者)の学校への信頼と関心を得ることに成功しており、比較的前向きな意欲と展望をもっていることがわかる。
しかしながら、学校ホームページの運用上の課題は、ホームページの急速な普及にもかかわらず十分解決されてきておらず、今後は行政、教育委員会等も含めた啓蒙活動や対策検討が必要とされるであろう。
次回は、J-KIDS大賞が与えたインパクトと今後の展望についてまとめることとしたい。
*1 第1回全日本小学校ホームページ大賞ホームページ <http://www.j-kids.org/>
*2 豊福晋平[2003a]「オンラインデータベースを利用した学校ホームページ群の客観的評価 その2」、日本教育情報学会第19回年会発表論文集
*3 豊福晋平[2004]「悉皆調査およびアンケートからみる小学校ホームページの運用状況」、情報処理学会知的財産・社会基盤研究会EIP-23、研究発表
*4 学校ホームページ評定用の詳細基準と得点分布解説は<http://www.i-learn.jp/>からダウンロード可能である。
*5 豊福晋平[2003b]「2003年J-KIDS大賞・県代表選考(概要)」<http://www.i-learn.jp/arc/index.asp?did=114&k=1Z45N23Y>
*6 越桐國雄[2001]「インターネットの教育利用の現状'00.1」<http://okumedia.cc.osaka-kyouiku.ac.jp/educ/enq00/enq00a.html>