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GLOCOM - Publication

Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

S字波による局面分析

講師:公文俊平(GLOCOM所長)

 

 3月9日に公文俊平GLOCOM所長による「S字波による局面分析」の研究会が行われた。社会を見る上でのレンズは、歴史的(いわば通時的)な変化としての「S字波」と、ある時点での(いわば共時的)分布を示す「ベキ分布」の2つがあり、この間にもある種の関係があるが、今回のテーマはS字波についてであった。

  1. S字波(Sigmoid)による局面分析では、横軸に時間、縦軸に適当な指標を取ると、似たような現象や変化が、「出現」・「突破」・「成熟」の3局面によるS字波の連鎖として現れる。これに、出現以前の「形成」局面と、成熟面のオーバーシュート後の「定着〜衰退」局面を追加して5つの局面とした。特に最初の形成局面では、多くの挑戦と試行が行われるものの、本格的な出現に至らず消滅するものも多い。オーバーシュートはバブルを生じさせ、その収束の程度によって定着する場合と衰退する場合とがある。また大S字波は、フラクタル構造のように小S字波の反復として現れる。また、成熟局面が次のS字波の出現局面と重なる混乱期は社会が下り坂に向かっているというメタファとなり得ることで、S字波の連鎖は長波の変動と見なすことができる。
      

     
  2. S字波は分析深度によって、以下の5段階のそれぞれの小S字波に分解できる。深度0では、文明を宗教文明、近代文明、そしてポストモダンとしての智識文明に大別できる。深度1では、近代文明が西暦1550年から200年ごとに、軍事化、産業化、情報化の3局面に分かれる。深度2では、軍事化(=国家化)、産業化(=企業化)、情報化の各局面が100年ごとの3局面に分かれる。たとえば産業化には、第一次から第三次産業革命が対応する。同様に深度3は50年ごと、深度4は25年ごと、さらに深度5と、各局面ごとに出現・突破・成熟の小局面に分解できる。
     
  3. 現在は産業化の成熟局面であり、その中の第三次産業革命の突破局面に位置する。第三次産業革命も3局面に分かれ、現在は、1番目のコンピュータ産業の軍事・ビジネス利用の突破局面から、2番目のロボット・個人用機械・Bio-Nano-Cognitive産業の出現局面に位置する。さらに細かい第三次産業革命の出現局面の3小局面で見ると、現在は1番目のメインフレームによる演算の時代は定着・衰退局面を迎え、2番目のサーバ・クライアント・有線インターネット・通信の突破局面から3番目のユビキタス・光・無線インターネット・監視の出現局面に位置する。
     

     
  4. 現在はまた、情報化の出現局面とも重なっており、その中では第一次情報革命の出現から突破局面に位置する。第一次情報革命の3局面で見ると、現在は、1番目の智民・智業の台頭の突破局面から、2番目の智のゲームの展開の出現局面に位置する。さらに第一次情報革命出現局面を細かくした3小局面では、現在は1番目の初期智民であるテクノクラート対ハッカーの定着・衰退局面を経て、2番目のNPO-NGO-Geek(日本のオタク)の成熟局面から3番目のユビキタス環境のスマートモブズの出現局面に位置する。このスマートモブズは同意見の仲間の中では議論はするものの、多数派としての行動をとることはなく、民主主義とも無縁なタイプとして初期智民の進化形として登場してくる。
     

     
  5. 産業化以降のS字波は、日本の場合は、西欧に比べ60年から90年遅れたS字波を示す。旧ソ連の場合は、1950年以降の消費者用の工業化を突破することなく崩壊を迎えた。また日本は消費者用の自動車・家電で突破した後、もの作りにこだわるあまり、医療・教育・娯楽などサービスの大衆化の局面の波に乗りきれていない。さらに遅れてきた中国やアジア諸国は、これら前の波を見つつ各局面をさらに短期間で追従しつつある。
     
  6. 日本の西欧化に着目すると、西欧が200年かかったS字波の変化をほぼ60年で追従してきたことがわかる。1880年代は、日本の国家化局面の出現期にあたり、1940年代は国家化局面の突破と産業化局面の出現となり、さらに2000年代に産業化の突破と情報化の出現とが重なっている。突破局面と出現局面が同時に起こるときには混乱が生じるが、これは下降局面的な状況と見なすことができる。この下降局面的な底に当たる時機に明治憲法、昭和憲法が制定・改憲され、今日また平成憲法論議が起きている。

 以上が、公文GLOCOM所長による講演の概要である。会場からは、横軸に時間ではなく成長勾配を取ることや、下降局面としての逆S字波のさらなる分析、カタストロフィ理論との関係、S字波に乗りきれなかった事例、アジアなど追従するS字波の歪みの分析などについて質問が出され、議論の波紋が限りなく広がっていくように思えた。

小林寛三(GLOCOMフェロー)

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