人間は自分では自覚的意思に基づき行動していると思っても、実際人間は自分では自覚的意思に基づき行動していると思っても、実際は「無意識」や情動に支配されている部分が意外に大きい。しかもマルチメディア情報は、その豊富なシグナル・リダンダンシーによりモウダリティ効果を生むので人間の深部にある無意識の世界にさえ到達し、人間の感受性と精神に大きな影響を与える。 そうなると「人間は自分の意識と行動をコントロールする能力があるから責任能力がある、責任能力がある以上、内面的な思想と信条は完全に自由であるべきである。」という、自由と責任に関する大命題も再検討の必要が出てくる。
「意識的理性」を言葉による論理の世界とすれば、「意識的感性」「意識的理性」を言葉による論理の世界とすれば、「意識的感性」はマルチメディア技術が活躍するイメージの世界である。「無意識的理性」とはカクテル・パーティ効果、サブリミナル効果の例に見るような無自覚的な認知過程の世界である。「無意識的感性」の世界では、マルチメディアはポケット・モンスター事件の例のように、メディアが無意識のうちに人間の神経生理及び精神に直接的な影響を与えることがあるので危険性が大きい。
意識的であれ無意識的であれ、人は心に思うことをすべて実行して意識的であれ無意識的であれ、人は心に思うことをすべて実行してしまうわけではない。「新しい脳」つまり大脳新皮質による自制心が働くからである。しかし非常事態に遭遇して個体維持の必要性に迫られた時、またはマルチメディア情報に影響されて「古い脳」つまり大脳辺縁系の勢力が優る時には抑制機構が解除されてしまう。また反復刺激により感覚が麻痺して抑制機構が解除されてしまうこともある。したがって抑制機構がまだ弱い青少年や、酒鬼薔薇事件の少年のように直観像能力をもつほど感受性の鋭い青少年にとっては、ポルノや暴力に関するマルチメディア情報は極めて危険な刺激になることがある。米国の通信品位法は一部が発効停止となっており、その後の民間による自主的規制も実効があがっていない。日本も同様である。少なくとも青少年を有害情報から保護するための方策が緊急に必要である。