『GLOCOM Review』 2001年4月号(第62号)

デジタル・デバイドと日本の課題:ドットフォース(DOT Force)参加の教訓と課題

会津 泉
要約

DOT(デジタル・オポチュニティ・タスク)フォースは、G8の九州・沖縄サミットにおけるIT憲章を契機に結成された、デジタル・デバイド(情報格差)解消のためのタスクフォースである。G8各国から政府代表、産業界代表、NPO代表が参加しているが、日本のNPO代表として国際大学GLOCOMの公文俊平所長が任命され、その代理として筆者はドットフォースに参加しており、その経験から見えてくる日本の課題について論じている。

ドットフォースに与えられた任務とは、デジタル・デバイド解消のための具体的施策について、政策・規制、環境整備、アクセス拡大、費用低減、人材の育成、Eコマースの普及などの課題をあげて、国際協力の具体策を検討し、G8首脳に対して提出される報告書をまとめることである。

ドットフォースの課題を考えるとき、「IT革命」の世界規模での推進を主張する人々は、ITこそがこれまでの経済開発の道筋とは違い、通常の発展段階を超えた「蛙飛び(リープフロッグ)」を可能とするという楽観論的な立場に立っている。

しかし、その根拠がだれにも明らかなほど確固としたものかというと、必ずしもそうとはいえない。端的に言えば「途上国では、とくに農村・地方過疎地などに行けば、水も電気も薬も食料も、基本的な生活条件、ベーシック・ヒューマンニーズ(BHN)が満たされてないところがまだまだ多い。そういうところでコンピューターやインターネットは、まったくの贅沢品であって、途上国の実態を無視した先進国側の押し付け、自己満足に過ぎない。ITよりBHNが先だ」との否定的な声がかなり強い。

これは途上国側の人々の声であると同時に、援助機関などで働く先進国側の専門家にも共有された意見である。つまり、いまだこの問題には決め手となる解決策について合意が得られていないということになる。2001年3月1日から2日にかけてケープタウンで開かれたドットフォースの会合も、方向性の乏しい議論となった。

しかし、今後の途上国の発展は、文化・社会を含めた、個々人のエンパワーメントにつながるようなIT利用の伸びが注目されると筆者は指摘する。飢餓、貧困、病気といった基本要件でさえ途上国と先進国との間の格差は絶望的に広がろうとしている現実のなかで、ITに期待することは、現実ばなれした発想だとの批判は十分心して受け止めるべきだとしても、人間の主体性、文化と教育面での誇りといったことは、きわめて重要な価値をもつことであることがドットフォースの経験から伝わってくるからである。

こうした流れに対して、インターネットに代表・象徴される知的エンパワーメントの場とツールがどのようにかかわるかということは、きわめて重要な問題である。そう考えると、日本のかかわりはまだまだ底が浅いのは事実だが、しかし、始めた以上きちんと結果が出るようになるまで、長期にわたってきちんと、まさに持続的に取り組んでいかなければならない。それは、途上国への約束であると同時に、なにより日本の次世代を担う人々への約束なのだという。

ドットフォースの活動そのものは、次回サミットで終了となる運びだが、筆者は、デジタル・デバイド問題をテーマとした研究活動をさらに継続、発展させ、ドットフォースの活動を契機として国際的につながりができはじめたNPO同士の連携を深め、企業・産業界とNPOとの協力・協働関係について探求を深めることなどを課題として取り組んでいきたいとしている。

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