認知症の人にやさしいまちづくりに関する研究


ハッカソン・アイデアソンで作る介護・福祉・認知症の未来


近年、IT業界を中心に、「ハッカソン(hackathon)」と「アイデアソン(Ideathon)」という言葉が注目されています。前者は「ハック(hack)」と「マラソン(Marathon)」、後者はアイデア(Idea)」と「マラソン」をかけ合わせた造語となっています。このハッカソンは、プログラマーやデザイナーなどの技術者が、与えられたテーマに対し、アイデアや開発技術を集中的に短期間で競い合う開発イベントで、その成果を披露し、評価し合うのが特徴となっています。それに対しアイデアソンは、特定のテーマについて多様なメンバーが集まり、対話を通じ新たなアイデアやビジネスモデルの創出・構築を短期間で行うイベントです。

これまでアイデアソンは、「ハッカソンの事前会議」や「ハッカソン導入部で行われるアイデア創出」と位置付けられていましたが、近年ではアイデアソンが単独で開催されるケースも増え、IT関連以外の地域づくり、サービス開発、介護・福祉などの分野で注目されています。
以下、これまで国内で行われた介護・福祉・高齢社会・認知症などに関連するアイデアソン・ハッカソンの動向を紹介します。
(一覧表をこちらからご覧いただけます。)

2013年1月19日には、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)と株式会社スマートエイジングが主催で、「高齢社会アイデアソン」が都内で開催されました。これは、地方自治体などが公開しているデータ(オープンデータ)等を活用し、引きこもり高齢者や認知症の方との地域社会との関わりなど、今後の高齢化社会における課題に取り組む事を目的としたイベントです。このアイデアソンでは、具体的なアプリ・サービスの構想と、将来の展開シナリオを作ることをゴールに設定していました。この成果とfacebookグループでの対話を基に、アプリ・サービスを1日がかりで開発する「高齢社会ハッカソン」が同年の2月2日に開催されています。

・国際大学グローバル・コミュニケーション・センターHP
https://www.glocom.ac.jp/2013/01/post_187.html
・OKJP HP
http://okfn.jp/2013/01/08/agingsociety/
・高齢社会アイデアソンfacebook
https://www.facebook.com/events/377000512394809/
・NIKKEI オープンデータ情報ポータル「高齢化社会、オープンデータで豊かに アイデアソン実施」
http://opendata.nikkei.co.jp/article/201301192108817741/

2014年7月22日には、ソーシャルインクルージョン新聞Le toit【ルトワ】とNPO法人Better than todayが主催となり、「介護テック・アイデアソン!inソーシャルクリエイティブラボ」が行われました。ソーシャルクリエイティブラボとは、イシューホルダー(当事者)×エンジニア×クリエイターで、日本社会を取り巻く様々な社会課題を改善していくためのアプリやサービスを開発するプロジェクトです。同イベントでは「介護がもっと楽しくなるプロダクトの開発」のため、現役介護士×エンジニア×クリエイターで新しいイノベーションを生み出すことを目的にしています。ここで作られたアイデアは、イベント終了後に事務局が中心となり実現に向けて動いています。

・介護Tech Ideason 「介護テック・アイデアソン!inソーシャルクリエイティブラボ」
https://socialcreativelab.doorkeeper.jp/events/13202

ロボット業界とのコラボレーションも見られます。「感情認識機能」を持ち、自分の判断で動くことができるロボット「Pepper」を、認知症の予防・改善のために応用しようとするプロジェクトです。2014年12月13日にL.M.D.P(LIFE & MEDICAL DESIGN PLATFORM)が主催したアイデアソンにおいて、医療関係者と開発技術者がアイデアを持ち寄り生まれた認知症患者をサポートする事に特化したアプリ「ニンニンPepper」が、2015年2月に行なわれたPepperのロボアプリコンテストNo.1を決めるイベント「Pepper App Challenge 2015」で最優秀賞を受賞しました。この結果を受け、同年8月29日には、専門的な分野とテーマ設定が行われ、より実効性のあるアイデアを提出する第2回のアイデアソンが開催されました。ここでは「MCI/認知症」「サルコペニア」「服薬管理」「パタカラ(口腔ケア)」が主なテーマとなりました。また、9月12日には、Pepperを用いたハッカソンが開催されました。このイベントでは、「福祉・介護」をテーマに、3つのチームによって「Pepper」のロボアプリが開発されました。アプリは、Pepperとにらめっこができる「ぺらめっこ」、認知症介護のメソッドである「ユマニチュード」をPepperで実現するデモアプリ、Pepperにモップを装着し掃除をさせる「おそうじPepper」の3種類です。

・Pepperアトリエ秋葉原 with SoftBank「L.M.D.P. Pepperアイデアソン2ndSeason@東京」
https://pepper.doorkeeper.jp/events/29851
・Pepperアトリエ秋葉原 with SoftBank「Pepper App Challenge 2015 Winter ハッカソン #2 -介護・福祉- を開催しました」
http://pepper-atelier-akihabara.jp/archives/808
・ロボット情報WEBマガジン ロボスタ「「L.M.D.P. Pepperアイデアソン2nd Season」に行ってきました。その1」
http://robotstart.info/2015/08/30/lmdp-pepper-ideason-2nd-season-report-1.html


地方自治体と協同で行われている事例も増えています。
愛知県では、4月25日に医療機関や介護事業者のキーパーソンが交流するもあはーと交流会が主催した分科会で、「介護・福祉 × ITアイディアソン」が開催されました。この分科会では、介護・福祉などの分野から、身近な地域課題・生活課題をテーマとして、介護福祉の現場の声とIT技術の専門家、クリエイター等によるアイデアソンによって、課題解決の糸口を創り出す事を目的としています。5月23日には、地域の課題解決を支援する活動を行うCode for Nagoyaが主催の「Code for Nagoya 介護ハッカソンin osc2015 Nagoya」が行われました。このハッカソンは、先述のアイデアソンの成果を引き継ぎ、実際のサービスとして実現する事を目的としており、共催としてもあはーと東海の他に、オープンデータ東海や名古屋工業大学グローバル共生情報研究センターといった団体が参加しています。

・Code for Nagoya「「Code for Nagoya 介護ハッカソン in OSC2015 Nagoya」開催報告」
http://code4.nagoya/post/119924200699/code-for-nagoya-%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%83%8F%E3%83%83%E3%82%AB%E3%82%BD%E3%83%B3-in-osc2015-nagoya%E9%96%8B%E5%82%AC%E5%A0%B1%E5%91%8A

京都府では、2015年12月19-20日にかけて、医療従事者と他分野の専門家によって運営されている団体であるヘルスケアハッカソンが主催で、滋賀医科大学などと共催した「第11回ヘルスケアハッカソン:認知症との共生」が行われました。このハッカソンの参加者は6チームで編成され、アプリが作成されました。アプリの発表では、介護現場を効果音や香りなどで劇場化し、介護者が楽しく介助作業を行えるようにサポートする「介護劇場サウンドサービス」が最優秀賞、「患者本人の考えや思い」と「サポートする介護者の側の考えや思い」のズレを認識することで、前向きにそのギャップを解決しようする「認知症パレット」が審査員賞を受賞しました。

・Healthcare Hackathon HP「第11回ヘルスケアハッカソン:認知症との共生 認知機能が落ちても快不快はわかる」
http://healthcarehackathon.jp/2015/12/24/post-59/
・Healthcare Hackathon facebook
https://www.facebook.com/groups/163757640491194/permalink/455795981287357/

このように、介護・福祉・高齢社会・認知症などに関連するアイデアソン・ハッカソンは近年増えており、また地方でも行われています。しかし、その成果報告に関しては、あまり目にする事がありません。各地の成果を互いに参照しながらより良いアイデアやアプリを作っていくことができるよう、成果の積極的な公表が求められるのではないかと考えられます。

2017-01-13