認知症の人にやさしいまちづくりに関する研究


「安心につながる社会保障」に向けて求められる高齢者分野オープンデータ

日本政府は、2012年の「電子行政オープンデータ戦略」(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)などに基づくオープンデータの取組を進めてきました。2015年6月には、同本部による「新たなオープンデータの展開に向けて」を策定し、①課題解決型のオープンデータ推進、②データの公開と利活用の一体的推進を基本として重点的に取り組むべき事項を整理しました。

地方に関しても「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」や、地方公共団体向けのオープンデータパッケージの開発や提供、「オープンデータ伝道師」の派遣など、オープンデータ推進の支援が行われています。今後は、国や地方公共団体に加え、独立行政法人や公益企業などへも取組が拡大していくことが予定されています。

ここでは、政府が目指す「一億総活躍社会の実現」の強化分野である「安心につながる社会保障」に向けて求められるオープンデータの候補例を、高齢者福祉・医療等の分野を中心に紹介します。

■【オープンデータ2.0】の背景と位置付け

政府が【オープンデータ2.0】を打ち出した背景には、超少子高齢化社会への備えという側面があります。IoTの開発・普及で増加する多種多様なデータをAIなどで高度に活用していくことが、超少子高齢化対策と関係する「一億総活躍社会の実現」「女性の活躍促進」「地方創生」「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」などの政策課題の解決に資すると考えているのです。

また、これまでに策定された「電子行政オープンデータ戦略」や「新たなオープンデータの展開に向けて」などの基本的な考えを継承しつつ、「課題解決型」オープンデータ推進を実現するために、政府による取組の強化が行われています。さらに政府は2020年までを集中取組期間と定めており、政策課題を踏まえた強化分野を設定し、オープンデータの更なる深化を図っていくようです。これらが【オープンデータ2.0】と位置付けられています。

「オープンデータ2.0」は、次の3点にまとめることができます。

①政策課題を踏まえた強化分野を設定することで、当該分野のデータ公開を推進し、利用者が課題の気付き・解決に取り組む中で、別のデータ公開のニーズ等が生まれ、更なるオープンデータ化が進むというサイクルを促進

②国及び地方公共団体におけるオープンデータの取組を進めるとともに、民間企業等におけるオープンデータ的な取組についても一定の範囲内で協力を依頼(競争領域ではなく、協調的な領域)

③地方公共団体における取組においては、防災等の地域を跨いだ共通的な分野における取組とともに、各々の地域特性に応じた自主的な取組も併行して促進

(参考:「【オープンデータ2.0】官民一体となったデータ流通の促進 ~課題解決のためのオープンデータの「実現」~」高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定 平成28年5月2 0日)

■「安心につながる社会保障」と、オープンデータの候補例

安倍政権が掲げる「一億総活躍社会の実現」とは、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」というアベノミクス「新・三本の矢」(強化分野)の実現を目的としたものです。ここでは、「安心につながる社会保障」の各分野と、政府が挙げているオープンデータの候補例を紹介します。

【分野】高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤の確保
【オープンデータ候補例】待機高齢者の情報、介護施設の情報(空き情報など)

【分野】求められる介護サービスを提供するための人材育成・確保、生産性向上
【オープンデータ候補例】介護人材の確保に係る支援情報(介護職員の再就職支援の情報など)

【分野】介護する家族の不安や悩みに応える相談機能の強化・支援体制の充実
【オープンデータ候補例】地域包括支援センターの情報、介護保険制度の内容や手続き

【分野】介護に取り組む家族が介護休業・介護休暇を取得しやすい職場環境の整備
【オープンデータ候補例】介護休業、介護休暇の制度の情報

【分野】元気で豊かな老後を送れる健康寿命の延伸に向けた取組強化
【オープンデータ候補例】健康寿命の延伸に向けた先進的取組の情報(介護予防等の取組に係る情報など)、健康寿命の推移

【分野】生きがいを持って社会参加したい高齢者のための多様な就労機会の確保、経済的自立に向けた支援
【オープンデータ候補例】就業者数、高齢者向けの仕事の情報

(「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第69回)議事次第」首相官邸制作会議 参考資料3 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai69/gijisidai.html

上記の「安心につながる社会保障」の各分野での候補例として挙がっているデータについて、現在はどのようなデータが提供されているのか、政府データカタログサイト「Data.go.jp」で調査を行いました。調査の方法は、「候補例」の字句から検索キーワードを作成し、「Data.go.jp」で検索。得られた結果の「データ名」「データの種類」「リンク」「組織」をリスト化しました。

各オープンデータ候補例はこちらまたは下記からご覧になれます。

調査の結果、「待機高齢者」に関するデータを見つけることはできませんでした。また、オープンデータの候補例として挙がっているデータには、施設の空き情報や就労機会に関する情報など、高い更新頻度が求められるものが含まれていますが、年次よりも細かいものはありませんでした。内容面、形式、更新頻度など、より活用しやすいデータの提供に向けた課題は少なくないようです。

2017-02-18