認知症の人にやさしいまちづくりに関する研究


【連載】高齢者ドライバーと免許証に関する分析-認知症700万人時代に備えてー(2)

3.認知症と交通事故
厚生労働省が2025年に65歳以上の5人に1人である700万人が認知症またはその予備軍という時代になると予測していることは先に述べました(現在は7人に1人)。この発表を受け、NPO法人高齢者安全運転支援研究会は、2012(平成24)年の65歳以上の免許証保有者数が14,209,958人(男性=9,577,910 女性=4,632,048)であることから、約200万人の高齢者ドライバーが認知症またはその予備軍であるとの試算を出しました(第3回 日本認知症予防学会学術集会 資料)。この数は正確な件数とは言い難いと同研究会も認めていますが、同時に警察庁が年代別患者数の調査を基に、約30万人ほどの認知症または予備軍のドライバーがいると推計していることを紹介しています。

また、産経新聞は、2016年12月14日付けの記事で、「認知症交通事故、過去3年間で216件 増加傾向」という記事を掲載しました。記事によれば、警察庁の発表で、認知症の人が車を運転して起こした事故が、2016(平成27)年までの過去3年間で少なくとも216件あったとしており、2014(平成25)年は63件、2015(平成26)年は75件、2016(平成27)年は78件と年々増加傾向にあるとしています。また、2016(平成27)年の78件のうち、27件が人身事故、残り51件は物損事故です。

上記と関連して、「認知症ねっと」には、認知症が関係していると思われる高齢者の自動車事故がまとめられています。同サイトによれば、2012年から2015年8月までの約2年間の高速道路逆走事故は447件であり、その約7割が65歳以上の高齢者で、そのうち認知症あるいは認知症が疑われる人は約4割であったとしています。

これまで見てきたような、実際に認知症の人による事故が増加しているかについてはデータや統計が不足しており、はっきりとしたことはわかっていません。しかし、認知症の人による交通事故が起こっていることは事実であり、対応を求める声が高まってきているとはいえるでしょう。高齢者ドライバーを支援する「高齢運転者支援サイト」(一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会)には、高齢運転者による交通事故の状況が掲載されています。

(「高齢運転者支援サイト」より)

このグラフからは、「16-19」歳が最も違反別人身事故件数が多く、30代が最も低くなり、その後年齢を重ねるうちに徐々に増加していくことが理解できます。また、同サイトによれば、高齢者が事故を起こした場合、事故後に認知症との診断が出るケースも見受けられるとしています。
次回からは、高齢者と免許証のデータを紹介していきます。
(執筆・杉内寛幸)

2017-04-24