Researcher

専任・併任研究員

大川内直子 おおかわち なおこ

主任研究員(併任)
修士(学術)

■研究分野
文化人類学、データ分析、データのフィールドワーク、イノベーション、科学技術社会論(STS: science, technology and society)

私は、理科系の学部で学ぶなかで科学知識の生成・普及過程に関心を持ち、ラボラトリー・スタディーズと関係の深い文化人類学に研究分野を転じました。
修士課程ではSTS(科学技術社会論)を中心に先行研究にあたったほか、東京大学発の創薬ベンチャー企業であるペプチドリーム社や産学連携組織である東京大学TLOなどの協力を得て調査を実施。本調査を通じて、アカデミアにおいて科学的知識が生み出された後、商業的な価値を付与されながらステークホルダーを巻き込み、商品になっていく過程を明らかにしました。

また、STS研究と並行して学んでいた文化人類学のトラディショナルな先行研究を通じて、文化人類学における典型的な研究手法である参与観察およびエスノグラフィー自体に関心を持ち、そのビジネスへの応用について考え始めました。企業の製品・サービス開発においてはユーザー心理の徹底的な理解やアフォーダンスの知見が重要であり、文化人類学者がユーザーの参与観察を実施することで有益な知見が得られると考え、現在運営している株式会社アイデアファンド設立の着想を得ました。

文化人類学においては人間の普遍性を論じることが難しくなりました。一方で、資本主義は日常のいたるところにその根を広げており、日々の生活に関わるもので売られていないものなどないように思われます。我々を取り巻く資本主義のモメントはとても強力で、資本主義とは相いれないような文化でさえも飲み込み均一化する音が聞こえてくるような気さえします。
その資本主義の最たるものとして金融があります。金融の世界では様々なモノの将来の価値までもが瞬時に数値化され、売買を通じて再定義されています。私は、こうした価値のデジタル化が人類文化の多様性とどのように相互作用するのかについて考えてみたいと思っています。

実際に金融に携わる中で、デジタル化されえない質的な知というものの相対的な価値は今後も残り続けるのではないかという思いを強めました。
こうした思いをベースに2018年に設営した株式会社アイデアファンドは、「アイデアで資本主義をおもしろく」を旗印に掲げています。資本主義の中でなお残る・あるいは変わりゆく人間の特性や文化の様相を、文化人類学の方法論を用いて地道に明らかにすることを通じて、多様な資本主義のあり方を追求しています。

略歴

1989年、佐賀県生まれ。
大学院在学中に海外からリサーチを請け負っていた経験や、創薬ベンチャーであるペプチドリーム社について実施した調査を通じて、文化人類学の調査手法をマーケットリサーチに生かしたベンチャー企業を興したいと思うに至った。一方で、文化人類学では人類文化の多様性に着目することが多く、資本主義を原動力とした普遍に向かうモメントを扱うことに難しさを感じた。そこで、金融を資本主義の表出と位置づけ、自ら金融業界に身を置くことで実践的な理解を試みた。国内大手通信企業グループに対するファイナンス組成などに携わるなかで、先端的な金融の知識を身に着けるとともに、資本主義と多様性が共存し相互作用しながら発展していく世界観を実現したいという思いを強くした。そこで2018年に、人類の多様性と資本主義の相互作用について研究することを目的の一つとして、リサーチ企業である株式会社アイデアファンドを設立。

主要業績

  • 「文化人類学の「応用」としての起業と実践」、菊池信彦編著『人文学を社会に開くには。 パブリックヒューマニティーズから考え・行動する』(文学通信、2025年4月上旬)
  • 「産学技術移転の人類学的考察」、2014年12月提出(修士論文)
  • 単著『アイデア資本主義 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア』(実業之日本社、2021年)
  • 「【新】資本主義の次なる「フロンティア」はどこにある?」(NewsPicks ザ・プロフェット)
  • 連載「事業開発、組織変革のためのフィールドリサーチ」(Biz/Zine、2021年9月〜)
  • 「「お客様の声」から良いアイデアが生まれない理由」(東洋経済オンライン、2021年9月)
  • 「投資はアイデアという最後のフロンティアへ:大川内直子──「THE WORLD IN 2022」 IDEA CAPITALISM」(『WIRED』日本版VOL.43)

主要講演・出演・口頭発表など

  • NHK「NHKスペシャル/ヒューマンエイジ 人間の時代 第1集 人新世 地球を飲み込む欲望」(2023年6月11日初回放送)
  • 中京テレビ「若林正恭とあーだこーだ」(2024年3月28日・3月29日・3月30日放送)
  • 日経MJ「NTTやサントリー、哲学や文化人類学で消費者の心つかむ」(2025年1月23日)
  • NHKラジオ第1「プラッと/資本主義の内と外」(2025年4月2日放送)
  • 「文化人類学における組織研究、及び、研究対象としての産学連携」、人類学若手の会第二回総合研究集会、2014年3月
  • 「文化人類学で紐解くビッグデータ−行動ログのフィールドワークによる〈独身男性化するシニア〉の発見」、日本マーケティング学会カンファレンス、2020年10月
  • 「『アイデア資本主義』(実業之日本社)刊行記念 大川内直子さん×山口真一さんトークイベント 文化人類学者×計量経済学者が語る資本主義のフロンティア」、2021年10月26日

メディア掲載・出演実績

  • インタビュー:UT-BASE「【東大生の進路を「再考」する①】大川内直子さん 「綺麗な履歴書に意味はない」」(2022年6月26日)
  • インタビュー: Forbes JAPAN 2022年12月号別冊「MAKE A NEW STORY FROM CONSULTING with Forbes JAPAN 30 UNDER 30」
  • NewsPicks「The UPDATE」(2022年10月4日放送)
  • PIVOT「日本を変えるイノベーションとは?」(2022年11月YouTube動画公開)
  • 日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」(2022年11月29日放送)

主要委員歴

  • 2024年~ 特別区長会調査研究機構 研究会リーダー

学歴

2008年4月 東京大学 理科Ⅱ類入学
2012年3月 東京大学 教養学部卒業
2012年4月 東京大学大学院 総合文化研究科 超域文化科学専攻進学
2015年3月 東京大学大学院 総合文化研究科 超域文化科学専攻修了
日本学術振興会特別研究員(DC1)内定辞退

経歴

2015年3月 みずほ銀行(グローバル・コーポレート・ファイナンスコース)入行
         本店・営業第十七部配属、国内大手通信企業グループを担当
2018年1月 株式会社アイデアファンド設立、代表取締役社長に就任
2019年4月 国際大学GLOCOM 主任研究員
2019年6月 昭和池田記念財団 顧問

関連リンク

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