Innovation Nippon 報告書「わが国における偽・誤情報の実態の把握と社会的対処の検討 ―政治・ コロナワクチン等の偽・誤情報の実証分析―」

偽・誤情報元年といわれる2016年の米国大統領選挙以降、フランス大統領選挙などで政治的な偽・誤情報が流れただけでなく、インドやメキシコでは偽・誤情報がメッセージアプリで拡散され、殺人事件が起こったこともあります。日本でも、2018年沖縄県知事選において候補者を貶めるような偽・誤情報が多数拡散されただけでなく、2020年に入り、新たに新型コロナウイルスやコロナワクチンに関する偽・誤情報ーinfodemicーが大きな問題となりました。

このような状況や、総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」とSIA「Disinformation対策フォーラム」での議論を踏まえ、本プロジェクトでは、「我が国における実態の把握」と「ファクトチェックの推進などの社会的対処」に主眼を置いた、偽・誤情報に関する調査研究を実施しました。

そして数々の定量分析から、次の10個の含意を導きました。

1.【全体】対象年齢を問わない広範囲の偽・誤情報対策が急務
2.【全体】平時・有事双方を想定したファクトチェック体制と結果の配信体制を構築する
3.【政府】官公庁・自治体のウェブサイトをより見やすいものとし、正確な情報・データやファクトチェックを迅速に発信する
4.【政府】政府信頼度を損なわないようなコミュニケーションを実施する
5.【政府・メディア】ワクチンのように機微に触れるトピックでは、偽・誤情報のきっかけにならないよう細心の注意を払って発信する
6.【政府・プラットフォーム事業者・メディア】メディア情報リテラシー教育のより一層の充実を図る
7.【プラットフォーム事業者】偽・誤情報を誤っていると気づいている人の投稿が拡散されやすくなるような仕組みを構築する
8.【プラットフォーム事業者】特に偽・誤情報を信じやすい媒体において対策を推進する
9.【プラットフォーム事業者・メディア】真偽を確かめることにニーズの高い媒体(マスメディア・SNSから読めるネットニュース)でのファクトチェック配信を強化する
10.【研究機関】偽・誤情報についてさらに調査研究を実施し、具体的な対策を導出していく

本研究の成果が、日本における偽・誤情報の問題解決に少しでも寄与できれば幸いです。

Innovation Nipponは、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) が、グーグル合同会社のサポートを受けて2013年に立ち上げた研究プロジェクトです。情報通信技術(IT)を通じて日本におけるイノベーションを促進することを目的とし、法制度や、産業振興・規制緩和等の政策、ビジネス慣行などに関する産学連携の実証的なプロジェクトを行い、関係機関の政策企画・判断に役立ていただくための提言などを行っています。

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