認知症の人にやさしいまちづくりに関する研究


事例:(株)ウェルモ 社会資源データベース「ミルモ」で介護分野をIT化

2013年に福岡県で創業されたベンチャー企業・株式会社ウェルモが、福祉ビッグデータの活用を目的とする社会資源データベース「ミルモ」を開発し、同県の福祉業界で活用されています。同社のHPによれば、「介護に関わるすべての人が必要な情報を見つけられるようにする」という創設以来の目的のため、福岡市の介護事務所のデータベース化と介護支援専門員(以下、ケアマネージャー)へのタブレットの提供を行っています。  

福祉業界、特に「介護」分野に関しては、IT化が最も進んでいない分野であり、現場のケアマネージャーの多くが電話やFAXを使用し、事務所探しを手作業で行うなどアナログで非効率的な作業のため離職につながるケースが散見されてきました。こういった様々な問題の解決のために、介護事業者向けの業務支援システムの構築にウェルモが乗り出し、「ミルモ」というサービスが開発されました。「ミルモ」は、施設や人材に関する「介護情報」、介護制度や障がい制度などの「行政情報」、生活支援やボランティアなどの「地域情報」、福祉用具や病院、介護タクシーなどの「関連情報」を統一データベース化し、ウェルモが社会資源として管理・活用を行っています。  

ウェルモは次の3つのサービスに取り組んでいます。

「ミルモタブレット」…120以上の検索項目から、介護事業所の外観や内装などの選定が行える検索機能を備え、保険請求分・自己負担分を計算できる保険点数計算サービスを提供する。

「ミルモプロ」…通所介護事業所や住宅型有料老人ホーム、サービス付高齢者住宅などが、自社の施設情報を入力することで、タブレットにタイムリーに編集内容を反映することができ、認知度情報、他事業所との比較稼働率をグラフで確認できる。また、周囲10Kmの居宅介護支援事業所に所属するケアマネージャーが保有するタブレットにお知らせを送信することができる。

「ミルモプラス」…介護に関するニュースや行政情報をまとめた介護情報サイト。  

これまで、介護事業所の多くはウェブサイトを制作しておらず、情報発信があまりできていませんでした。しかし、このミルモタブレットによってもたらされる膨大なデータから、介護を必要とする人のニーズや、リハビリの訓練内容を入力することによって、条件に合致した事業所を探すことが容易になります。  

介護事業所の基礎情報については、WAMNETの提供する介護事業者情報を活用しており、また福岡市行政から提供された介護事業所の住所、事業所番号、加算情報、人員配置、障がい福祉各窓口と連絡先の一覧などのオープンデータを利用することで、網羅的な事業所データの収集・活用が可能になっています。2015年には、行政のオープンデータを活用したビジネス例として、総務省の開催する「地方創生に資する「地域情報化大賞2015」」で奨励賞を受賞しています。  

2016年10月には、株式会社リクリート住まいカンパニーの運営するSUUMO介護との、福岡エリアにおける事業提携を始めています。有料老人ホーム・高齢者向け住宅情報を提供するサイト「SUUMO介護」の福岡での展開にあたり、「ミルモ」の情報と連携しています。ミルモタブレットでSUUMOに情報提供を行い、より広く多くの介護関係者への情報活用が行われることを目的としています。  

ウェルモの福祉ビッグデータを活用した取り組みは、高齢化社会に進む日本の福祉業界にとって重要となる、先駆的な事例となると考えられます。2017年には、首都圏に「ミルモ」の提供エリアを拡大する計画であり、今後も注視していく必要があるでしょう。  

■参考URL

・株式会社ウェルモHP

http://www.welmo.co.jp/

・社会資源データベース「ミルモ」とSUUMO介護福岡における連携開始について

http://http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000018462.html

・ビックデータで介護サービスのインフラを目指すウェルモ、VCや地銀などから総額7,500万円の資金調達を実施(THE BRIDGE)

http://thebridge.jp/2016/03/welmo-funding

・福祉ビックデータの構築と活用 (INDEPENDENTS CLUB)

http://www.independents.jp/article/item001068

・ウェルモ、介護事業所検索を首都圏でも日経新聞(8月1日付)

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO05479590R30C16A7TJE000/

2016-12-12