2020.02.19

DISCUSSION PAPER_No.17(20-003)「フリマアプリは新品市場を拡大させる -2万人調査データの定量分析-」

フリマアプリは新品市場を拡大させる -2万人調査データの定量分析-

山口真一(国際大学GLOCOM 主任研究員・講師)

要旨

本研究では、2万人の消費者を対象にしたアンケートデータを基にして、フリマアプリでの購入と出品が、それぞれ新品購入金額にどのような影響を与えるのか定量的に検証した。分析に当たっては、内生性に十分に対処するため、消費者個人の嗜好度をモデルに組み込むと共に、操作変数を使ったGMM(一般化モーメント法)によって分析を行った。

6つのカテゴリーを対象に分析を行った結果、「理髪料・コスメ・香水」「家電・スマホなど」「おもちゃ・ホビーなど」の3カテゴリーにおいてフリマアプリ購入金額が増えると新品購入金額が減少するという、代替効果が見られた。その一方で出品については、全てのカテゴリーにおいて、フリマアプリ出品金額(出品して取引された金額)が増えると新品購入金額が増加するという、補完効果が見られた。また、得られた弾力性を基に日本全国における新品消費への影響を推計した結果、年間484億円新品消費を押し上げているということが分かった。さらに、消費者の主観的評価でも、フリマアプリ利用で新品購入金額が増加したと考えている人の方が、減少したと考えている人よりも多かった。

以上の実証分析により、フリマアプリでの取引は新品市場を代替するというよりは、むしろ補完していると考えることが示された。このことは、商品を開発する企業の人は、フリマアプリを警戒するよりも、フリマアプリで取引されやすいか・検索されやすいか・受けやすいかなどを考慮して商品を開発したり、情報発信やブランディング、顧客ロイヤリティといったマーケティング戦略においてもフリマアプリを意識したりすることで、むしろ自社の売り上げを拡大できることを示唆している。

キーワード

C to C市場、シェアリングエコノミー、フリマアプリ、メルカリ、実証分析、操作変数法

2020年3月発行

  • totop