「地方移住の商品化」の歴史社会学
―1980年代以降の通史的分析―
要旨
本論文は「地方移住の商品化」を、移住を促す実践が経済的対価を伴うサービスとして提供され、地方移住の選択可能性や支援体制それ自体が市場的・制度的に生産/再生産される過程として捉える。1980年代以降の社会経済状況とメディア環境の変化に着目し、雑誌・オンライン上の表象を史資料として探索的に通史分析し、国内地方移住における媒介と市場形成の歴史的展開を明らかにする。分析の結果、商品化は単線的ではなく、社会経済状況とメディア環境の変化に影響を受けながら、出版・不動産による「田舎暮らし」観の提示、不況下の仕事・キャリア領域への拡張、2000年代以降の自己実現や生の再設計と接続した商品化の拡大などといった形で段階的に変化してきた。さらに、移住希望者への媒介に加え、自治体の広報・制度運用・委託事業を支えるサービスが厚みを増し、地方が比較可能化され選別・推薦される回路が整備されていったことが示唆された。
キーワード
地方移住、移住産業、地方移住の商品化、田舎暮らし、地方創生
2026年3月発行