Innovation Nipponは、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) が、グーグル合同会社のサポートを受けて2013年に立ち上げた研究プロジェクトです。情報通信技術(IT)を通じて日本におけるイノベーションを促進することを目的とし、法制度や、産業振興・規制緩和等の政策、ビジネス慣行などに関する産学連携の実証的なプロジェクトを行い、関係機関の政策企画・判断に役立ていただくための提言などを行っています。
2022年度は、大きく分けて「誹謗中傷」と「偽・誤情報及び陰謀論」という2つのテーマで調査研究を行いました。その内、誹謗中傷に関連する「わが国における誹謗中傷の実態調査」と「ジャーナリストへの誹謗中傷の実態」の2つの調査研究報告書を公表しました。
わが国における誹謗中傷の実態調査
本調査研究では、わが国における誹謗中傷の被害の実態を詳細に明らかにするため、大規模アンケート調査を実施しました。得られたエビデンスを踏まえ、政府やプラットフォーム事業者がどのような対策をとるべきなのか、本研究で導かれた含意は次の6点です。
- インターネット上の誹謗中傷の被害に少なくない人が遭っており、とりわけ青少年の保護の観点から対策が必要である
- インターネットだけでなく現実社会も含めた、誹謗中傷に関する抜本的な対策や啓発が求められる
- インターネット上についてもインターネット以外についても、誹謗中傷に遭遇した際の対処方法を啓発する必要がある
- 属性による被害の傾向についてエビデンスベースで啓発を進めると共に、プラットフォーム事業者も属性に応じた適切な対策をする
- リスクの高い行動・属性(「自撮り」「恋人・パートナーとの仲良しな様子」「政治の話題」の投稿など)についてエビデンスベースで啓発することが必要
- 透明性については、エビデンスベースで施策に反映できるという視点で求めていくことが重要
ジャーナリストへの誹謗中傷の実態
本調査研究では、ジャーナリストへの誹謗中傷問題の実態を明らかにするため、アンケート調査による定量分析を行いました。調査で得られたエビデンスを踏まえ、次の5点の含意を導き出しました。
- ジャーナリストは一般生活者を大きく上回る水準でインターネット上の誹謗中傷に遭遇しており、言論の自由の観点からも対策が急務である
- インターネット以外の関係性でも、誹謗中傷に関する対策が求められる
- 多数のフォロワー数を抱えるインフルエンサーによる誹謗中傷について特に対策を検討
- 特に新聞協会所属の企業に関連していないジャーナリストについて、誹謗中傷に遭遇した際の対処方法を啓発する必要がある
- リスクの高い投稿内容(「ニュース記事・コンテンツに対し、リツイート・シェアなどで拡散」「トレンドになっているコンテンツに関して、議論を開始するような投稿」「他のジャーナリストとの日常会話」)についてエビデンスベースで啓発することが必要である
名称 | Innovation Nippon 2022 |
形態 | 委託研究 |
プロジェクトオーナー | グーグル合同会社 |
プロジェクトリーダー | 山口真一 |
プロジェクトメンバー | 山口真一 渡辺智暁 谷原吏(神田外語大学外国語学部 専任講師/GLOCOM 客員研究員) 大島英隆(GLOCOM 客員研究員) 田邊新之助(GLOCOM リサーチアシスタント) 三根ももこ(GLOCOM リサーチアシスタント) |
実施期間 | 2022年4月~2023年3月 |
関連成果
同2022年度のテーマ「偽・誤情報及び陰謀論」に関連する調査報告書「偽・誤情報、陰謀論の実態と求められる対策」は下記ページで公表しています。