開催日:2025年6月26日(木)
会場 :イイノカンファレンスセンター RoomA
主催 :国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
後援 :グーグル合同会社、こども家庭庁、総務省、文部科学省
協力 :株式会社朝日学生新聞社、Adora株式会社、一般社団法人セーファーインターネット協会、一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構、LINEヤフー株式会社

プログラム(敬称略)

  • 基調講演①「インターネットにおける青少年保護に関する政府の取組」
    吉田 弘毅(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 企画官)
  • 基調講演②「子どもと青少年保護:オンラインでの安全を確保する仕組み」
    野田 由比子(グーグル合同会社 YouTube政府渉外・公共政策部 ジャパン リード)
  • 基調講演③「スマホ時代の青少年とネットの現実:エビデンスが示す課題と提言」
    山口 真一(国際大学GLCOOM 准教授・主幹研究員)
  • パネルディスカッション①「子どもとインターネット:企業に求められる責任と未来へのビジョン」
    今子 さゆり(LINEヤフー株式会社 メディア統括本部 シニア トラスト&セーフティー マネージャー)
    小林 浩一(小学館 第二コミック局 コロコロコミック編集室 副編集長 / コロコロコミック研究所 所長)
    冨田 直人(Adora株式会社 代表取締役社長)
    渡辺 智暁(国際大学GLOCOM 教授・主幹研究員・研究部長)※モデレーター
  • パネルディスカッション②「安心・安全なネット社会をどう実現するか:制度・ルール・多様な主体の連携を考える」
    上沼 紫野(LM虎ノ門南法律事務所 弁護士)
    てぃ先生(現役保育士 / 育児アドバイザー)
    富貴 大輔(朝日学生新聞社 朝日小学生新聞編集長)
    吉田 弘毅(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 企画官)
    吉田 奨(一般社団法人セーファーインターネット協会 専務理事)
    山口 真一(国際大学GLOCOM 准教授・主幹研究員)※モデレーター

基調講演① インターネットにおける青少年保護に関する政府の取組
(吉田弘毅)

◆ 青少年のインターネット利用動向とトラブル

インターネット利用に伴い、青少年がトラブルに巻き込まれる事例が散見される昨今、政府では青少年のインターネット利用に関する各種調査や法整備、啓発活動を行っています。

こども家庭庁が実施した2024年の調査によると、0歳から満9歳の子どものうち95.2%がインターネットを使っており、インターネットを5時間以上利用していると回答した青少年は約42%となりました。このように、青少年がインターネットに触れる時間はどんどん長くなっています。

インターネットに接触する時間が長ければ、当然トラブルも増えます。2024年の警察庁による調査では、SNSに起因する事犯として児童福祉法違反や児童売春・ポルノ禁止法違反、青少年保護条例違反といった犯罪に巻き込まれる例が発生していることがわかります。

◆ 青少年インターネット環境整備法について

青少年をインターネット上のトラブルから保護するものとして、「青少年インターネット環境整備法」があります。この法律は2009年に施行、2018年に改正され、基本理念として「青少年が適切にインターネットを活用する能力を習得し、有害情報を閲覧する機会を最小化すること」を掲げています。

民間主導で青少年に向けた取り組みを行うことを主軸としたこの法律では、携帯電話事業者・OS事業者・特定サーバー管理者などに対して義務や努力義務を定め、みんなで青少年の健全なインターネット活用を後押しする環境整備を目指しています。

携帯電話の通信事業者に対しては、契約時に青少年が端末を使うかどうかを確認し、フィルタリングについての説明・提供を行うことなどが義務付けられています。また電子掲示板やSNSを含む特定サーバー管理者においては、特定サーバーを利用して青少年有害情報の発信が行われた場合に、その情報を青少年が閲覧できないようにする努力義務が課せられました。

加えて、青少年インターネット環境整備法は数年ごとに基本計画を決定します。2024年9月の「第6次基本計画」では、インターネット利用の低年齢化や生成AIの普及といった社会情勢を踏まえ、次の3つの方向性を定めています。

  1. 利用制限から利活用前提とすること
  2. 低年齢層の子どもの保護者への働きかけ強化
  3. ペアレンタルコントロールの重要性

◆ フィルタリングとペアレンタルコントロール

青少年インターネット環境整備法では、携帯電話の通信事業者等は契約者に対してフィルタリングサービスの説明をする義務があります。青少年がスマートフォンなどの端末を利用する際に、保護者が「フィルタリングは不要」と明言した場合を除いて、携帯電話事業者はフィルタリングサービスの利用を条件に通信サービスを提供する義務が課されています。また、端末の販売時にはフィルタリングソフトウェアの設定を行う必要があります。

青少年が適切にインターネットを利用するという観点では、ペアレンタルコントロールも有効な手段です。これは、各端末の設定を活用してアプリのインストールを制限したり、課金や使用できる時間帯の制限をしたりするというものです。例えば、あらかじめ親子で話し合い「22時から翌朝5時まではスマートフォンを使わない」と決めるなどがこれに当てはまります。総務省ではペアレンタルコントロールの普及・促進も行っています。

さらに、インターネットでトラブルがあった場合の事例集を作り、自治体・小学校・中学校などに周知をしており、この内容は毎年改定しています。近年増加傾向にある、SNSなどのコミュニケーショントラブル、不適切な投稿、偽情報・誤情報、生成AI・オンラインカジノ・闇バイトに関する話題など最新の情報を盛り込み、広く理解を促しています。

◆ 青少年に関するリスクと今後の検討

政府は今後に向けた議論の場として「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」を立ち上げ、青少年保護についての検討を進めています。インターネットは情報を入手するだけでなく、SNSなどを通じて青少年が発信側になる側面もあります。その際のリスクにどう対応すべきかといった議論を重ね、徐々に方向性が公表されつつあります。総務省も主体的にこれらの取り組みに関与し、協力・連携しながらインターネット時代の青少年保護・育成に努めてまいります。

子どもと青少年保護:オンラインでの安全を確保する仕組み(野田由比子)

◆ YouTube が運営上の指針としている 5 つの基本的な考え方

YouTubeは、グローバルで運営されるオンライン動画共有プラットフォームで、2025年に20周年という節目を迎えました。現在、1分間にアップロードされる動画は約500時間、動画数は1日平均2000万本以上にも及び、世界100以上の国と地域に対応しています。

YouTubeは若年層から大人までのユーザーに幅広いコンテンツを提供していますが、その利用においては安心・安全が不可欠です。プラットフォーム事業者として、有害なコンテンツや行為からクリエイターとユーザーを守る重要性を深く認識し、青少年も含めたすべての人に安全な環境を提供する努力を続けてきました。

その一環として、2023年10月には運営上の指針である「子どもと青少年に関するYouTubeの基本的な考え方」を発表しました。

  1. 子どもと青少年のプライバシー、身体的安全、メンタルヘルス、ウェルビーイングを守るために、オンラインにおいて特別な対策が必要
  2. 特に 12 歳以下の子どもがいる家庭内でのオンライン利用ルールを定めるにあたり、保護者は重要な役割を担う
  3. すべての子どもは、個人的な興味やニーズに応じて、年齢にふさわしい質の高いコンテンツを無料で視聴する機会を与えられるべきである
  4. 子どもの発達上のニーズは青少年とは大きく異なり、オンライン体験に反映させる必要がある
  5. 適切な安全保護対策があれば、革新的なテクノロジーは子どもや青少年に恩恵をもたらすことができる

YouTubeではこの指針に沿ってサービスやツールを展開しており、適用事例としては主に「コンテンツモデレーションとおすすめ機能」、そして「年齢に合った体験の提供」が挙げられます。

青少年保護に寄与する機能 ①コンテンツモデレーション・おすすめ機能

YouTubeでは、動画・コメント・リンク・サムネイルなどのあらゆるコンテンツに適用されるコミュニティガイドラインを設け、ヘイトスピーチ・ハラスメント・暴力的な表現を制限し、子どもの安全にも寄与しています。このガイドラインを元に、コンテンツモレデーションにおいて、YouTube の取り組みの核となるのは、「R」を頭文字とする4つの原則(4つのR)です。この“4つのR”は全てのコンテンツに適用されますが、子どもの安全に特化したポリシーやガイドラインを設けることで、子どもと青少年の保護をさらに強化しています。

  1. Remove:ポリシー違反のコンテンツを削除(リムーブ)すること
  2. Raise: 信頼できる情報を見つけやすく(レイズ)すること
  3. Reduce:ボーダーライン上のコンテンツの拡散を減らす(リデュースする)こと
  4. Reward:信頼できるクリエイターに還元(リワード)すること

加えて、ポリシーには違反しないものの、18歳未満のユーザーには不適切だと判断されたコンテンツは年齢制限の対象となります。YouTubeにログインしていないユーザーは、年齢制限のあるコンテンツへのアクセス制限がなされ、ログインが求められます。ログインしている場合でも、年齢に満たない場合はコンテンツへのアクセスが制限されます。

またYouTubeのおすすめ機能は、信頼性の高い情報源からの情報を上位に表示する一方で、「質の低いコンテンツの原則」を設けることで、低品質なコンテンツについては見つかりにくくするようにしています。

  • 過度に商業的
  • 否定的な行為や態度の奨励
  • 教育的内容に見せかける
  • 理解が困難・煽動的、または誤解を招く
  • 子どものキャラクターの不適切な使用

2023年11月には、18歳未満の青少年が繰り返し視聴した場合に問題となる可能性がある動画のおすすめを制限する、新たな安全対策も始めました。例えば、身体的特徴を比較する、争いを見せるなどの動画を繰り返しおすすめすることを制限しています。

これは専門家と協力し、単体で視聴するのは問題ないものの、繰り返し視聴されると一部の青少年に悪影響を与える可能性のある動画カテゴリを特定し、開発されたものです。現在、この対策の対象をさらに広げ、繰り返し視聴されると一部の青少年にとって悪影響を与える可能性のあるトピックを、更に拡大しています。

青少年保護に寄与する機能 ②年齢に合った体験の提供

YouTubeでは、子どもたちが安全に動画を視聴できるYouTube Kidsアプリの提供、および保護者管理機能によって年齢にあわせてYouTube上の体験をカスタマイズできるようにしています。

YouTube Kidsには、保護者が子どもに見せるコンテンツを決められる機能があります。例えば、お子さんが視聴するコンテンツを完全に管理したい場合は、保護者自身が一つずつ承認できる設定があります。また、4歳以下、5歳から8歳向け、9歳から12歳向けというカテゴリをもとに、それぞれの年齢層に合ったコンテンツを表示させることも可能です。さらに、スクリーンタイムの制限を設定したり、動画やチャンネル全体をブロックするのも簡単に行えます。

そして保護者管理機能とは、ペアレンタルコントロールに該当するものです。YouTube Kidsを卒業し、YouTube上の幅広いコンテンツを探求する年齢の子どもたちの保護者向けに設計されており、動画視聴体験をカスタマイズできる機能があります。通常のYouTubeで利用できる一部の機能をオフにしたり、特定のコンテンツのブロック、子どもたちの視聴履歴を確認・削除すること、自動再生を無効にする機能などが含まれます。

◆ 青少年保護を加速させる、業界の取り組み

2025年3月、YouTubeは10カ国を代表する十数社の地域のコンテンツクリエイターやパートナーとともに、子どもと青少年のデジタルウェルビーイングに関するイニシアチブに参画しました。

子どもや青少年を育成し、楽しませ、つなげる力があるオンラインコンテンツの力を最大限に発揮するには、子どもや青少年に向けたコンテンツの開発・配信を牽引している世界各地のパートナーの強みと影響力を活用することが重要だと考えます。

責任あるプロダクト設計と、地域のニーズに合ったコンテンツ制作を通じて業界基準を引き上げ、世界中の子どもと青少年のオンラインコンテンツ体験を良質なものにするためにも、今後もパートナー・ユーザーの皆様とともに、オンラインにおける子どもと青少年の安全を確保する取り組みを推進していきます。

スマホ時代の青少年とネットの現実:エビデンスが示す課題と提言
(山口真一)

◆ Innovation Nippon 2025 調査研究概要と背景

近年、幅広い年齢層でスマートフォンの普及が進み、中高生全体の90%程度がスマートフォンを利用しています。青少年がインターネットやデバイスを使うことは、情報収集や学習への活用、クリエイティブな活動も後押しするポジティブな側面がある一方で、一部の課題も見え始めています。

そこで、実証研究に基づくエビデンスベースの施策検討と、今後の政策提言につなげることを目的として、青少年と保護者を対象に調査を実施しました。

【調査研究の全体像】
・文献調査:国内外の報告書・研究を収集し分析
・アンケート調査:同じ家庭の保護者と青少年あわせて4,800名を対象に全国調査
・インタビュー調査:10名の中高生に対してヒアリングを実施
・有識者会議:専門家とともに調査結果を検討、政策提言へ反映する

◆ 青少年のインターネット利用の実態:アンケート解答から読み解く3つの課題

まずサービス利用状況を調査したところ、中高生の利用率が最も高いのは動画共有サービスで87.0%でした。SNSやメッセージアプリも広く使われており、保護者の認識以上に利用されている実態が明らかになりました。

デジタル機器の利点としては、情報収集や知識の共有、連絡の利便性が挙げられます。一方、デメリットでは「使いすぎによる学業・生活への支障」が最多で、青少年の4人に1人が「時間に関するトラブル」を経験しています。次いで多いのは「SNSで他人と比較してストレスを感じた」ことで、特に未熟な青少年ほどストレスを感じやすい傾向があります。

そして3番目は、コミュニケーションの問題です。誹謗中傷が人間関係に悪影響を与える事例が目立ちます。Innovation Nippon 2023の調査では、脅迫や恐喝など9分類で分析した結果、若年層ほど直接的な攻撃を受ける割合が高く、特に10代男性では10.6%が経験していました。動画共有サービスやSNSにおける誹謗中傷は、青少年にとって深刻な課題です。

◆ 青少年を取り巻くフェイク情報と家庭内ルールの実態

フェイク情報の問題は近年多く取り沙汰されており、実際に日本で拡散した10個の事例を用いた調査では、青少年も接触していましたが、保護者の方が2〜3倍多く接触しているという結果が出ました。フェイク情報の真偽判断に関する調査では、保護者の25%しか誤っていると気づけなかったのに対し、青少年は37.3%が見抜いており、保護者の方が騙されやすい傾向が見えてきました。ただし青少年は、フェイク情報を見聞きした後、平均して半数近くがSNSや会話、メッセージアプリで共有しており、拡散力が非常に高いことがわかりました。

家庭内ルールに関する調査では、「親のいる場所での使用」や「利用時間の約束」は守られにくい一方、親子で話し合って決めたルールは守られやすいという結果でした。保護者が青少年を見守る中では、ペアレンタルコントロールサービスを使う技術的な対処と、家庭内ルールを設けるという非技術的対処の2つの組み合わせが大事だと考えます。

また、総務省とGoogleによるYouTube啓発キャンペーン「ほんとかな?が、あなたを守る。」は、第1弾でYouTubeクリエイター9名によるショートムービー9本を公開し、合計1700万回以上再生されました。今後は学校の講座やチラシなどを通じて、青少年自身がネット利用に関する啓発を受けられる機会を作ることが重要だと言えるでしょう。

◆ 調査研究結果から導かれる提言

以上の調査研究結果から、Innovation Nippon 2025では14の提言をまとめました。そのうち5つをピックアップして紹介します。

①行政への提言:家庭内ルールづくりへの支援強化

青少年の約3割が「使いすぎで学業や生活に支障がある」と答える一方で、家庭内ルールがない、または守られていない実態が見えました。ただし、子どもと話し合って作ったルールは守られやすい傾向があるため、行政には「家庭内ルールづくり支援の強化」を提言します。

国や自治体は、具体的な手順や事例をまとめた手引きを無料公開し、学校や保護者会の講座、チラシや動画などを通じて伝える必要があります。その際、過度に不安を与える形ではなく、単に「使わなければよい」という結論に至らないように注意しなければなりません。子どもが正しくインターネットを利用できる環境につなげる形で啓発することが大切です。

②行政への提言:青少年への啓発活動の実施

調査では、中高生の3割以上が「ネット利用の啓発を受けたことがない」と答えました。啓発コンテンツは多いものの届いておらず、効果検証も不足しています。また、保護者よりも青少年自身が啓発を受けた方が、ペアレンタルコントロールがうまく機能していることも分かりました。

行政への提言としては、青少年と保護者向けに動画やチラシなどを整備し、戦略的に配信することが重要です。さらに、企業や公的機関のコンテンツを一つのポータルサイトから検索・活用できる仕組みを整えることも効果的です。

③教育現場への提言:メディア情報リテラシー

フェイク情報の調査で、情報の誤りに気づいた人にその理由を尋ねると「なんとなく違う気がしたから」という回答がとても多く、追加的にソースを確認した例は少ない結果となりました。フェイク情報は私たちの身近にあり、詐欺・闇バイト・オンラインカジノなども含めれば、実際の被害の原因となり得ます。

そこで教育現場への提言として、メディア情報リテラシー教育の充実を求めます。情報空間の特性やアテンションエコノミー、フィルターバブルなども含めて、情報の確かめ方(ファクトチェック)に関する啓発・演習などを充実させることで、青少年の被害を防ぐことができると考えます。

④事業者への提言:適切に子ども向けアプリを使う

過去の総務省との研究で、年齢に合ったアプリ利用がトラブル回避につながることが分かりました。例えば、小学生や未就学児にはYouTube Kidsを活用する、交流や課金を制限するペアレンタルコントロールを設定するのが有効です。

事業者への提言としては、年齢確認の実効性向上と子ども向けアプリのさらなる開発・実装を進めることが重要です。特に動画共有サービスやSNS、メッセージアプリで、保護者が簡単に設定できる仕組みを整え、ペアレンタルコントロールと青少年の適切なインターネット利用を促進することが求められます。

⑤保護者への提言:親子のすれ違いが生むリスク

家庭内では、ルールがあっても利用時間や場所が守られにくく、個人情報流出やSNSトラブル時に親へ相談する約束も十分浸透していません。そこで保護者には、子どもを見守るだけでなく「共に育ち、共に学ぶ」姿勢が求められます。利用時間や場所を親子で話し合い、ルールを定期的に見直すことが大切です。また、トラブル対処法や個人情報の守り方を保護者も一緒に学び、子どもたちと共有しましょう。

パネルディスカッション①子どもとインターネット:企業に求められる責任と未来へのビジョン

◆ 議題① 青少年がインターネットを安心・安全に、かつポジティブに活用できる社会環境の整備」についての取り組みとねらい

渡辺: 今回ご登壇の皆さんは、青少年がインターネットを安心・安全に活用するための活動をそれぞれ異なる立場から行っていると思います。はじめに皆さんがどんなねらいで何に取り組んでいるのかについてお聞かせください。

今子: SNSを通じた情報収集が爆発的に増えている昨今、フェイク情報や誹謗中傷、犯罪につながりかねない情報が多く流通しています。そんな中で当社が最も重視するのは、信頼性の高い情報を積極的に出すことです。
Yahoo!ニュースのトップには「Yahoo!ニューストピックス」があり、8本程度の見出しが並んでいます。ここには公共性が高いもの、または皆さんに見てほしい情報を編集者がピックアップして掲載します。偽の情報に惑わされている人たちに「そうじゃなかったんだ」と気づきを与えるきっかけになればというねらいも込められています。
加えて、Yahoo!ニュースに書き込まれたコメントはAIや人の目でチェックを行い、不適切なものは非表示にします。最近はAIを活用したコメント添削モデルを導入し、内容がガイドライン違反もしくはグレーなものだった場合、「本当にこのコメントを投稿しますか」とAIが注意を促します。冷静な状態での書き込みを促す施策は効果が出始めており、今後さらに推進したいと考えています。

小林: コロコロコミックは48年目を迎える雑誌で、小学生の読者に寄り添ったコンテンツの提供と、安心・安全に読める内容を常に心がけてきました。近年はYouTubeで複数のチャンネルを開設し、合算で300万人以上のチャンネル登録と、1ヶ月の動画再生数は2億4千万回以上となっています。
これまで紙媒体でコンテンツを提供してきたコロコロコミックですが、紙からデジタルに移行する社会において、デジタルでは「味付けが濃いもの」つまりインパクトのあるものが好まれる傾向があると感じています。
ただ、私たちの理念に照らし合わせると、必ずしもインパクトがあるものだけで視聴者を獲得するのは違うと考えます。子どもの視点に立ち、子どもたちの生活を見る中で「こんなことをしたら危ないよ」とストーリー性を持って伝える方法は、小学館の得意とする分野です。これはインターネットを安全かつポジティブに学ぶ方法にも応用できます。
説教じみた形でなく、エンタメの中に子どもたちが学べる内容が入っていたり、危険性をキャッチする力を鍛える内容を届けるなどのエッセンスをYouTube動画に入れ込むのは、非常に意味のある活動だと思います。

冨田: 当社は、スマートフォンの普及とともに青少年がトラブルに巻き込まれる事例を受け、愛知県警察および藤田医科大学と連携して「コドマモ」というサービスを開発しました。子どもや保護者のスマートフォンにアプリをインストールすると、様々な見守り機能を活用できます。
例えば、使いすぎを防ぐための利用時間管理や位置情報、歩きスマホを防止する機能に加え、児童が性的な自撮りを人に送るケースなども、AIが自動で「送ってはいけない」とお知らせします。
また、SNSのDMやグループチャットでいじめ・誹謗中傷・自殺・性被害などに関するやりとりがあった場合、AIがそれらを検知して保護者にアラートを出します。これまで見過ごされていたトラブルを察知しつつ、保護者が我が子のやりとりを逐一監視する必要がなくなり、親子にとって良いインターネット環境を作ることに取り組んでいます。
私たちは、子どもからインターネット環境を取り上げる、またはアプリやSNSを禁止することは、逆にリテラシー向上を妨げる要因になると考えます。保護者が何を求めるかだけでなく、青少年にとって何がいいのかを考え寄り添ったサービス設計が当社の特徴です。

渡辺: 子どもに寄り添ったサービス設計をしている部分は非常に興味深いですね。親が望むものとは少し違うところに子どもの自主性・自立性を尊重するやり方があり、場合によってはそちらを取っていくということでしょうか。

冨田: はい、それこそが大事にしている部分です。「コドマモ」には15万人のユーザーがおり、「こんな機能が欲しい、ここを改善してほしい」といった声が日々寄せられます。例えば、子どもの写真フォルダやチャットの内容をすべて見たいという要望も多いのですが、それを実装すると保護者側の望みしか叶えられないですよね。
私たちは子どものプライバシーを守りつつ、青少年自身がインターネットに触れながら自ら学ぶことを促したいと考えています。どちらか一方の意見を取り入れるのではなく、「最終的にみんなにとって良いものは何か」を意識してユーザーの声を聞き、意思決定しています。

渡辺: Yahoo!トピックスに何を載せるかについて、公共性を考えて決定しているとおっしゃった今子さんの話にも通じますね。逆に言うと、公共性の高い情報がクリックされやすいものではない場合もあると思います。商売のために最適なものや、短期的にリターンが大きくなるものはあえて取らないという理解でよろしいでしょうか。

今子: まさにそういうことです。公共性の高い情報が必ずしもクリックされるとは限りません。しかし、それらの情報をしっかり伝えることは私たちの社会的責任として非常に重要だと思っています。

渡辺: 先ほどのアプリの話題でも、大人のニーズ・子どものニーズといった対立構造が挙げられました。ただもう一つの課題として、家庭の事情によって大人が子どもの健全な発育を優先できない場合もあるかと思います。子どもの安心・安全の確保のために、家庭や保護者の役割は非常に重要です。しかし同時に、家庭の置かれた状況が千差万別な中で、子どものインターネット利用に関するケアが十分にできないケースもあるでしょう。

冨田: おっしゃる通り、「うちの子は大丈夫」などの温度差もある中で、全ての保護者が等しく課題感を持っているわけではありません。「欲しい人だけが見守りサービスを使えばいい、売上が上がればいい」ではなく、当社をはじめとする類似サービスを子どもたちみんなが使って初めて、青少年を取り巻くインターネットの課題は解決できると思います。
ただ、その部分にお金をかけられない方や、危機感が薄いために私たちのサービスが届かない層も一定数存在しています。今後は通信事業者・国・自治体などが連携し、子どもたちと保護者双方のリテラシーや危機感を上げていくことがとても重要です。

◆ 議題② ステークホルダー間の分担、特に保護者と企業の役割分担について

渡辺: 保護者にどこまで役割を期待するかについては、難しい問題ですね。フィルタリングに関する技術は様々ありますが、子どもの方がデジタル技術に詳しいがゆえに抜け穴を見つけたり、保護者が設定の仕方を知らなくてうまく使えなかったりする場合もあります。
加えて、子どもに有害と考える表現・接触機会について、企業がどこまで保護者の考えを尊重すべきなのかも悩ましいケースとして挙げられます。そのような観点から見た際に、保護者に何をどこまで期待するのか、あるいは企業としてここまではできるといったご意見を伺いたいと思います。

今子: 情報空間の健全性を確保する取り組みとして、2024年秋から朝日新聞と協力して作成した「ニュース健診」をスタートしました。これはクイズ形式で情報を読み解く力をテストできるというもので、メディアリテラシーの向上に役立ててほしいと考え提供しています。
もう一つの取り組みは、自殺報道の対策です。自殺報道が青少年を含むすべての人々に与える影響に鑑み、Yahoo!ニューストピックスでは見出しを抑制的な伝え方に留めたり、各コンテンツパートナーが配信する記事においても自殺を誘発する表現を避けることをお願いしています。あわせて専門家の解説や啓発コンテンツを掲載し、社会課題に少しでも対応できるよう努めています。

小林: 保護者と企業の役割分担において、全体最適がイメージできているときれいに分けられる部分があると思いますが、実際は企業人でありながら保護者の顔も持っており、役割を分けきれない場合もありますね。
役割分担をする以前に大切なことは、企業・保護者・青少年が一緒になって悩むことです。イメージするだけではなく、生活の中に実際どんな課題を抱えていて、課題を持つ人たちがどうすればそれを乗り越えられるかを一緒に考える、共創・協調が必要だと思います。
また、失敗を許容することも重要です。「包丁で手を切ると危ないから子どもに見せない。使わせない。」というのは、個人的には違うのではないかと考えます。インターネットを道具と捉えるとしたら、手を切る可能性もあります。しかし、料理をするのに便利な道具というように、使い方・心の在り方を伝えることはできますよね。もし親が上手に使えないのなら、一緒に悩んで試す視点も大事だと思っています。
コロコロコミックの名前の由来は、子どもは七転び八起きする存在だという考えからきています。失敗してもコロコロと前転して、前に進めるようにという願いを込めて「コロコロコミック」と名付けられました。親も失敗していいし、子どもも失敗していい。でも大きな失敗をしないように両者が一緒に考えるプロセスを持つといいのではないでしょうか。

渡辺: 過保護に育てすぎて、世の中でたくましく生きていく力がない子どもになってしまったら、それも失敗という見方もできますね。程よく失敗をしながら育つことも時には大事だということですね。

冨田: インターネットは危険な目に遭う可能性もはらんだツールです。しかし当社としては、最悪のケースからしっかり子どもたちを守りつつ、完全にスマートフォンやインターネットを避けるのではなく、様々なコンテンツに触れて七転び八起きしてもらうための土壌を作りたいと思っています。
当社のようなプレイヤーが今後たくさん出てきて、転んでも大丈夫な場所を作る人や活動を盛り上げる人たちがそこに参加するなど、ステークホルダー間で役割分担しながら青少年にとって安心・安全な環境づくりができればいいのではないでしょうか。

小林: インターネットから学べることは豊富にあり、利便性が高い道具として使いこなすことが大切です。しかし一方で、画面の向こうにいる人が傷つく・悲しむという実体験も同時に育てていかなければなりません。それらの実感や痛みを汲み取れる感受性を育てることも必要なのではと感じます。

◆ 議題③ 青少年の安心・安全なインターネット環境を考える皆さんへのメッセージ

渡辺: 子どもたちが健全に育つために、青少年がインターネットを安心・安全に、かつポジティブに活用できる社会環境の整備は、皆さん共通して必要だと考えていることがわかりました。しかし、実際にそれを実現するうえでは、取り組むべき課題がまだまだ残されています。
それらを踏まえつつ、この問題について模索している様々なステークホルダーの皆さんに向けてのメッセージをいただいて、パネルディスカッションの締めくくりとしたいと思います。

今子: 青少年が安心してインターネットを活用するための施策においては、子どものプライバシーをどう考えるか、保護者がどこまで関与するかといった深い議論があり、今後も工夫・検討の余地があると思います。

小林: インターネットで情報や学びを得ることは、危険性と背中合わせな側面もある一方で、人生を豊かにしてくれるものでもあります。その過程では、保護者が青少年と一緒になってインターネットの危険性に悩む経験も、かけがえのない時間になるかもしれません。コロコロコミックとしては、今後も青少年の安心・安全を確保しつつ、よりよく生きるためのヒントになる内容を発信できればいいなと考えています。

冨田: 私はこれまで、青少年とインターネットに関するビジネスに取り組んできました。周囲からは「とてもニッチだね」と言われたり、投資家から「それって儲かるの?」という声が寄せられることもありますが、社会環境の整備には欠かせない役割だと考えています。
今回のシンポジウムでは、青少年とインターネットの関係について真剣に考える皆さんの存在を知ることができました。今後はぜひ皆さんと協働して、より良い社会環境づくりに取り組んでいきたいと思います。

パネルディスカッション② 安心・安全なネット社会をどう実現するか:制度・ルール・多様な主体の連携を考える

◆ 議題① 青少年の適切なインターネット利用促進のためにできること

山口: 青少年のインターネット利用においては、リスクを最小限にしつつメリットを最大限に享受できる状態が理想的です。これを実現するために私たちは何ができるのかについて、パネリストの皆様それぞれの立場でご発言をお願いします。

吉田 弘毅: 青少年のインターネット活用に関して、政府では「青少年インターネット環境整備法」を中心としながら、関係省庁であるこども家庭庁・総務省・経済産業省などが協働で取り組んでいます。携帯電話事業者によるフィルタリング説明の義務化や、安全性向上のための普及・啓発活動としてトラブル事例集を発行し、危険性を知ったうえで保護者も青少年も正しくインターネットを使える状態を目指して活動しています。
青少年インターネット環境整備法は2009年に施行されたため、一部古い表現が残る法律です。当時と今とを比べたときの最も大きな違いは、インターネットが閲覧のみでなく双方向コミュニケーションの場となったこと、そしてSNS・動画共有サイトが広く浸透して私たちの生活になくてはならないものになった点が挙げられます。
インターネットを取り巻くこれらの変化を踏まえ、「いま必要な制度・ルール・政策とは何か」という検討が今後求められます。政府だけではなく、民間事業者などを巻き込んでみんなで課題意識を共通化し、それぞれが解決に向けた歩みを進めることが重要です。

吉田 奨: セーファーインターネット協会では、セーフラインや誹謗中傷ホットライン窓口を設け、インターネット上に掲載されてしまった情報の削除依頼を仲介しています。「この情報を削除してほしいけど、どこに相談したらいいかわからない」と悩む青少年や保護者からの連絡を受け、国内外のサービス提供業者に対し、事後対応をお願いする橋渡し役を担っています。
2024年は年間186件の青少年および保護者からの連絡があり、子どもたちが誹謗中傷や児童ポルノなどの被害にさらされる危険性は年々増加しています。青少年がインターネットを安心して利用するためには、様々な基盤の整備が必要です。しかし、それを一つの団体や事業者が一気通貫でやり遂げるのはなかなか難しいでしょう。私たちは削除措置の検討依頼に特化している関係上、親身な心のケアなどは公的機関にお任せしていますので、官民を含む様々な担い手の連携が今後ますます不可欠になると考えます。

山口: セーファーインターネット協会の取り組みは、相談しやすさに加え、実際の削除件数といった数値面での成果を見ても非常に素晴らしいものだと思います。子ども向け新聞の編集長を務める富貴さんは、青少年への教育的な観点や課題についてどう思われますか。

富貴: 朝日小学生新聞が子どもたちに身につけてほしいと考えるものの一つに「フェイクニュースにだまされない力」があります。その力を養うには、長期的に培う教養と、短期的に役立つ知識の両面が必要です。
長期的な教養の面では、新しいものに触れて子どもたちの好奇心を広げることを目的として、政治・歴史・スポーツ・文化・科学など多様な分野の話題を取り上げています。
また、青少年が大人になった10年後・20年後にも役立つ基礎的な知識や視点を育てる内容を掲載しています。例えば、参議院議員選挙の特集では「参議院議員とは?投票所で大人は何をしている?そもそも選挙に行く意味は?」といった内容を伝えました。フェイクニュースにだまされないためには、嘘のニュースを見たときに「おかしいぞ」と思う感覚が重要です。この違和感は、それまでに培った常識や知識がなければ感じ取ることができません。そのため、物事の仕組みや常識を知っておくことが重要です。
次に短期的な知識の面では、日々最新のニュースを取り上げ、いま世の中で起きていることを子どもたちに知ってもらうとともに、リテラシーを身につけることを重視しています。毎週月曜日の「情報のトリセツ」という連載コーナーでは、子どもたちの身近にあるインターネットについて、その特徴や課題、リスク、中には相手をだまそうとする悪い人がいることなど、すぐに役立つ内容を伝えています。
子どもたちには、長期的に常識として身につけておくべき力、いわば地力のようなものと、短期的にすぐに役立つ実践的な知識の両方を身につけて、偽の情報にだまされない大人になってほしいと考えています。子どもたちが、「情報を読み取る力」「発信する力」を少しずつ積み上げていけるよう、これからも丁寧に紙面を作っていきます。

山口: 長期的・短期的な視点を持ちつつ、子どもたちに様々なニュースを見せることは非常に大切ですね。重要な気付きをありがとうございます。てぃ先生は、保育士・情報発信者としてこの課題についてどう見ていますか。

てぃ先生: 近年、保育業界でもインターネットの適切な利用に関する議論がよく交わされています。私のもとにもスマートフォン・インターネットとの付き合い方について、保護者から日々多くの悩みが寄せられます。その中で共通しているのは、悩みを持つご家庭の多くは「子どもが一人でインターネットや動画に触れる時間が長い」ということです。
子どもは、大人と一緒に学びながら成長していくのが原則です。立って歩くときも、自転車に乗るときも、勝手に上達するわけではなく大人のサポートや声かけがあって初めて自分でできるようになります。子どもの成長にはその過程が欠かせません。
しかし、インターネット・動画の利用となると、子どもが一人で使っている現状がある。なぜなら、現代のお父さん・お母さんは忙しく、家事やリモートワークの時間を稼ぐために動画に触れさせている場合も多いからです。それでは正しい使い方やリテラシーを教わることはできませんよね。
インターネットの適切な利用促進のために必要なのは、大人たちが翻訳者になることです。誹謗中傷を見かけたり、バズっている動画が危険行為だった場合、そこに大人がいなければ真似してしまうかもしれない。しかし、それを行うときに発生する責任やリスクはしっかり大人が説明する必要があります。
最近は50%以上の子どもたちがダイエットをしているそうです。ご指摘があった通り、インターネット上の過度に加工された画像を見ると、自分は劣っているという感想を持つことがその要因と思われます。
そこに大人が翻訳者としていれば、「こういう画像はきれいに見えるようになっているから、比べる必要はない。あなたはあなたでいいんだよ」と言えます。そうすると画像を見た子の感想も変わるかもしれません。小さい頃は、インターネットや動画と触れるときにいかに子どもを単独にしないか、時間稼ぎの道具として使わないかが重要だと思います。

山口: 保護者と一緒という観点は、私も非常に同意するところです。近年では、SNSなどに載っている過度に加工した画像と自分とを比較して、ネガティブな影響を受ける青少年の事例が多くなっています。それについても保護者が一緒にいて翻訳してあげることが大切ですね。

上沼: 2008年に青少年インターネット環境整備法が制定されたときは、非常に先進的な法律でした。子どもにネットを使わせないのではなく、賢く使ってもらうためにフィルタリングをかける。つまり、ユーザー側がコンテンツの見える範囲をコントロールする視点です。
しかし、その後、青少年インターネット環境整備法は一度しか改正されておらず、今は、残念ながら、現状に合っているとは言いにくい状況です。法律の基本理念自体は現代にも当てはまるものがありますが、2009年の施行当初の「閲覧を中心としたインターネットの使い方」がベースになっており、SNSなどで発信する部分についてコントロールできていないのが今の大きな課題だと考えます。
私が所属する第二東京弁護士会のLINE相談では、2024年に年間のべ2700件の相談がありました。そのうちインターネット関連の悩みは11%を占め、「面白半分に児童ポルノを転送した」「誹謗中傷コメントを書き込んだ」といった、「自分が加害者になってしまった」という相談も増えています。今後は、青少年が発信する情報にまつわるトラブルを未然に防ぐための手だてが求められるのではないでしょうか。

◆ 議題② 社会全体として取り組むべきこと

吉田 弘毅: 社会全体で取り組むうえでは、それぞれの人ができることから地道にやっていく必要があると思います。青少年にとって、インターネット上には様々な危険があると啓発する、またはそれぞれの事業者が提供するサービスの中で工夫を凝らすこともできます。
Yahoo!ニュースには、コメントを書き込んだ際に「この書き込みは本当に大丈夫?」と問いかける機能があり、YouTube Kidsには子どもが見ているときに子どもに適していないコンテンツが出ない配慮があります。このように各自が意識啓発をし、サービス上の工夫をしながら同じ方向を向いて連携・実行していけば、社会のかなりの部分で青少年の適切なインターネット利用が促進できるのではと思います。

てぃ先生: 社会全体で取り組むべきことに加えて、大人が子どもに何を見せるかも重要な視点だと考えます。SNSやメディアなどでは、日常的に分断・誹謗中傷・炎上が起こっています。それが当たり前の世の中で、大人が一生懸命「人の悪口を言ってはいけない」と子どもに説いても、あまり説得力がない気がしています。これは理想論かもしれませんが、インターネット云々よりも、現実社会で私たち大人が「人とはこうあるべき」という姿をしっかり見せることが重要です。

山口: 確かに、SNSやインターネット上の様々な問題の本質にあるのは人間ですから、他者を尊重する気持ちはとても大事です。自分がされて嫌なことは相手に言わない・しない。子どもの頃から多くの人が教わってきた当たり前の道徳心ですが、これが実践できていないからこそインターネット上での問題が生まれています。インターネットだけの問題というよりも、「社会や人間としてどうあるべきか」という部分に紐づいてくる問いかけですね。富貴さんは新聞というメディアを担う立場として、この点についてどんな見解をお持ちですか。

富貴: 朝日小学生新聞のメインターゲットは子どもたちですが、その後ろにいる大人もインターネットについて積極的に学ぶ必要があります。子どもたちがインターネットに不慣れなのは当然として、私も含めた大人は果たして本当に使い慣れているのかと、常日頃疑問に感じています。
近年は生成AIが普及し、人間に話しかけるような形で問うと、まだ完璧とは言えませんがしっかり答えてくれます。これからはより完璧に答える未来が来るかもしれません。今まで検索エンジンを使い慣れていた大人にとっては、新たな技術を学ぶべき時が来ています。大人向けの啓発・教育の機会を設けつつ、大人が子どもと一緒に取り組むことで、より安心・安全なインターネットの使い方が実現できると思います。

山口: 青少年のインターネット利用に関する話題で、保護者から「子どもの方が詳しいから」という声をよく聞きます。そのとき私がお伝えするのは「保護者も子どもたちと一緒に学んでいくことが大切です」ということです。日々技術が進歩していますから、それを一緒に学んで対策を考えたり、話し合いながらアップデートすることが大事ですね。

吉田 奨: 技術がどんどん発展し、それらを悪用する人も増えている中で、技術をうまく味方にして矛だけでなく盾も強化していく考え方を持つべきです。私たちセーファーインターネット協会は、青少年を守る盾として官民連携でやってきましたが、まだ私たちの存在が保護者に十分届いていないことをもどかしく思っています。
インターネット関連のトラブルに巻き込まれる前から、私たちのような相談先を知っている人は非常に少ないです。多くの方は困ったことが起こって初めて「どこかに相談できないか」と探し始めます。そして検索したときに私たちにたどり着けるよう、また生成AIの回答の中でも私たちの協会名が出てくるようにすることが大事です。一人でも多くの困っている人が相談しやすくなるためのアプローチは、今後もぜひ考えていきたいと思います。

上沼: 私がよくインターネットに関して言うのは、「大人の知識が役に立たない時代がきている」ということです。昔は年長者の知識が役に立ちましたが、今は子どもの方がインターネットに詳しい場合も多く、年長者が持っている既存の知見だけでは太刀打ちできない可能性があるという自覚が必要だと思います。
社会が複雑になってくると、一つの事象にたくさんの人が関与してきます。つまり、誰か一人が頑張っても課題解決はできず、それぞれの場所でそれぞれの人ができることをしなければなりません。
今回のシンポジウムでは、政府や各事業者の様々な取り組みを知ることができ、非常に心強い気持ちになりました。それらのサービスをユーザーとして活用し、子どもたちも巻き込んで一緒に学び合う中で、多くの関係者が連携して青少年のより良いインターネット利用を促す社会になることを願っています。

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