イベントレポート
2016年は「フェイクニュース元年」と言われます。その年の米国大統領選挙で、多くのフェイクニュースが拡散されたためです。その後も問題は収束するどころか、むしろ世界中で拡大する一方です。2020年から始まった新型コロナウイルス・パンデミックでも多くの偽・誤情報が拡散され、WHOは「Infodemic」として警鐘を鳴らしました。
さらに、今話題の生成AIの普及により、フェイクニュース流通量が急速に増加することが懸念されています。誰もが自由に、簡単に、偽のテキストや画像を作成できるようになったためです。
このような懸念のもと、長年にわたり情報社会研究をしてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)では、グーグル合同会社のサポートを受けて実施しているInnovation Nipponプロジェクトにて、2019年より、フェイクニュースの研究に取り組んできました。研究では、フェイクニュースを見聞きした人のうち、実に7~8割程度の人が誤っていると気づいていないことや、フェイクニュースは人々の考えを変える力があり、選挙に影響を与えている可能性があることなどが明らかになっています。
本イベントは、年々問題が拡大しているフェイクニュースについて、多くのステークホルダーが一堂に会して議論することを目的に、G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合に合わせて開催されました。主旨について多くの企業や政府機関に共感していただき、後援や協力という形でご支援いただきました。講演とパネルディスカッションでは、フェイクニュースが蔓延する社会で一人一人が何をすればよいのか、そして社会全体としてどのように対策をすればよいのか、多様な視点で濃い議論を行いました。
このレポ―トは、そのシンポジウムの記録となります。本稿が政策策定・経営戦略に関わる皆さまの諸活動の糧となり、日本全体のITを通じたイノベーション促進への一助となれば幸いです。
インターネットの登場により近代工業モデルの上に成り立っていた近代文明が「サイバー文明」へと変化している。本読書会の前半では、経済モデルや所有権に対する考え方の変容、「持ち寄り経済」や「東洋的価値観」、「忠実義務」などの概念からサイバー文明への理解を深めた。後半はWeb3からサイバー文明との関連性を考察。Web3の認証やルールに関する課題や、実現される世界観への期待に関し、国内外の最新トレンドを交えつつさらに議論した。
9月に出版された『ソシオテクニカル経営~人に優しいDXを目指して~』の共著者による輪読形式の対談を行った。DX時代における「ソシオテクニカル経営」の再考を提起。一人ひとりの生活の質の向上に向けて、文脈に即して社会システムと技術システムを統合するデザインプリンシプルを定めること、データセントリックの設計を行うことなどについて、「多様性」や「標準化」、「レジリエンス」などをキーワードに内容を紹介した。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター、株式会社サイバーエージェント、株式会社セールスフォース・ジャパンが2022年6月に実施した「デジタル社会意識調査」の報告と、結果を踏まえたパネルディスカッションを行った。報告では調査により明らかになったデジタル社会に対して異なる意識を持った4つの層に向けたサポートの在り方の検討を提起した。パネルディスカッションでは、パネリストがデジタル化を阻む意識的・文化的障壁について指摘。「理想の暮らし」やフェアな社会に向けて失敗を恐れない組織文化の醸成、行政・民間の強みを生かした協力・協働関係の構築などの重要性が提起された。
1973年に刊行され、令和4年版で50回目の刊行を迎えた『令和4年版情報通信白書』。今年度版から大幅な見直しを行い、スリム化され、分かりやすく、データが充実した内容となったため、小熊氏から大きく変わったポイントや注目すべきトピックについての解説があった。続く質疑応答では高齢世代で大きく減少するICT利活用の実態やDX、ICT産業の課題、海外との比較状況等についての質問が多数寄せられた。
SNS上の諸課題を事例とデータから紐解き、社会的対処方法を提示する『ソーシャルメディア解体全書』(山口真一・勁草書房)と、インターネットによる社会の分断に対する具体的な処方箋を示す『ネット分断への処方箋』(田中辰雄・勁草書房)の同時出版を記念し、基調講演および有識者と著者らによるパネルディスカッションを行った。パネルディスカッションでは事前にパネリストに回答いただいたSNSをめぐる論点を起点に、メディア情報リテラシーやファクトチェック、法規制の在り方についての議論を行った。
人工知能学会「AI ELSI賞 Perspective部門」を受賞した書籍『RE-END 死から問うテクノロジーと社会』を取り上げ、編集に携わった塚田氏、高橋氏と共に「死」を切り口にテクノロジーやAI、倫理などの多面的な課題を考察した。講演では、書籍の内容のみならず、書籍発行の契機となったJST/RISTEXのHITE-Mediaプロジェクトや、書籍と連動して開催された「END展」について紹介された。パネルディスカッションでは書籍や展覧会で提起された、死と先端的な技術、社会制度とのせめぎ合いや課題について参加者の質問を交えて議論を深めた。
2021年9月1日にデジタル庁が創設され、国のDXへの取組が本格的に始まっている。この流れとコロナ禍を背景に公表された『令和3年版情報通信白書』では「デジタルで支える暮らしと経済」を特集し、我が国のデジタル化の現状や課題を国民生活、企業活動、公的分野からまとめている。講演では白書をとりまとめた藤井氏より内容の説明が行われ、続く質疑応答では参加者から白書の内容やDXの課題に関する質問が寄せられ、藤井氏ならびに庄司氏が回答した。
デジタル庁創設など国のDXへの流れを受けて、全国の自治体でも庁内や自治体全体のデジタル化が急務となっており、今春からデジタル推進課等が各地自治体内に設置される動きも出始めている。会津若松市では10年以上に渡り、「スマートシティ会津若松」に代表されるデジタル化を推進し、その成果も蓄積されている。今回は、その会津若松市の取組の特徴や課題について「共創」の観点から議論を行った。ディスカッションアジェンダとして、①持続可能な社会達成の「共創」について、②ガバメントセクターにおける新たな価値創造について、③自治体のデジタル戦略・推進課(室)に求められる役割の3点が設定され、ウェビナー参加者からの質問も交え、議論が展開された。会津若松市ではデジタル化ありきではなく、市民の要求・苦情への対応や利便性の向上に対応したサービスが実現されている。その背景には、市役所内部のICT人材の育成と適切な配置、市民の声を活かそうとする職員の意識などが反映していることなどが指摘され、ICT導入に留まらないデジタル化推進に向けた自治体の姿勢に重要な視座が共有された。
2020年12月に発刊された『デジタル・シティズンシップ』(大月書店)の出版記念イベントとして本シンポジウムを開催した。デジタル・シティズンシップ教育とは、参加型学習によって対話しながらデジタル技術・思考を身につけ、社会を主体的につくる学びへと誘う方法を指す。
シンポジウム前半では著者5名によって全4章の内容解説が行われた。後半ではNPOカタリバ代表理事の今村久美氏と東北学院大学教授の稲垣忠氏から問題提起が行われ、最後に視聴者からの質問をもとにディスカッションが行われた。
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