2018.10.22

DISCUSSION PAPER_No.12(18-004)「コーホート変化率法による2040年の農家人口推計と政策的含意」

コーホート変化率法による2040年の農家人口推計と政策的含意

彌永浩太郎(GLOCOMリサーチアソシエイト/アビームコンサルティング株式会社)
山口真一(GLOCOM主任研究員・講師)
小林奈穂(GLOCOM主任研究員)

要旨

この数十年、農家人口は減少の一途を辿り、かつ、基幹的農業従事者の平均年齢が66.6歳(2017年)と、深刻な高齢化が進んでいる。就農者の高齢化及び労働力不足は、経済的損失だけでなく、食料自給率低下や耕作放棄地の増加といった様々な問題を引き起こす。

このような状況で長期的な施策を考えるためには、今後農家がどうなっていくのかという実態を予測することがまず必要である。そこで本研究では、2040年に焦点を置き、農家人口がどのように推移するか推計を行う。推計には大賀(2015)を参照してコーホート変化率法を用いる。1985年から2015年までの農業センサスのデータを用いて、2040年までの農家人口と基幹的農業従事者の将来予測を行った結果、次の2点が明らかになった。

まず、農家人口の推計では、2015年時点で約488万人だったものが2040年には約82万人と400万人以上も減少することが示された(約17%まで減少)。そして、高齢化率が約69.7%にまで上昇し、年少人口の割合が約2.0%にまで減少することが示された。次に、基幹的農業従事者でも同様に、2015年に約175万人だったものが、2040年には約55万人まで減少することが分かった(約31%まで減少)。さらに、新規就農者は2040年には約0.1%しか存在しないことが分かった。

以上を踏まえ、次の2点の政策的含意が得られる。第一に、農業の法人化を促進する。農業法人には、大規模化とシステム化による高い生産性が期待されるほか、安定した労働環境の提供によって雇用労働力を新たに確保するということが期待される。第二に、農業のIT化を促進する。自動運転トラクターの実現、センサーによる生産管理、ドローンによる農薬散布といった農業のIT化は、過酷な農作業の一部を機械に委ね、労働力不足や高齢化を補う。また、農業における暗黙知をデータ化することで形式知化する試みもある。知の伝承が成功すれば、新たな農業の担い手をスムーズに育成することにもつながる。

キーワード

農家人口予測、2040年、農業の法人化、農業のIT化

2018年10月発行

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