シンポジウム「日本のAI計画と国際協調」

日時 :2026年1月27日(火)13:00~15:00(交流会~16:00)
会場 :イイノカンファレンスセンター RoomA
主催 :国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
協賛 :日本マイクロソフト株式会社

2026年1月27日、国際大学GLOCOMはシンポジウム「日本のAI計画と国際協調」を開催した。2025年を通じて、日本のAIガバナンスはより具体的なものへと肉付けが進んだ。2026年には、国際協調の文脈であるべきガバナンスの姿を議論する機会が予定されている。日本は他国にどんな貢献ができるのか。前半は3つの基調講演、後半はパネルディスカッションの2部構成で進行した。

基調講演1:AI基本計画
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局 人工知能政策推進室 企画官 佐藤貴幸氏

前半は、内閣府の佐藤貴幸氏の基調講演から始まった。講演テーマのAI基本計画とは、2025年9月に全面施行した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」に基づく日本のAI政策での総合戦略であり、「イノベーション促進とリスク対応の両立」「アジャイルな対応」「内外一体での政策推進」の3つを原則と掲げている。

AI法案の骨格と方向性を定めるまでには紆余曲折があった。特に焦点の一つになったのが、EUのような厳格な規制や罰則を設けるかどうかだ。米中のみならず、世界各国がAI開発競争に乗り出す中、日本では生成AI活用が進んでおらず、AIへの民間投資額も伸び悩んでいる。「AIが国力や安全保障に直結する技術と認識される中、AIの潜在的なリスクを過度に捉えてAIを使わないことが最大のリスクになる」と佐藤氏は述べ、日本のAI活用と官民での投資を進めることが急務と訴えた。

図1:生成AIの利用率とAIへの投資額の推移
出典:内閣府

世界のAI技術は急スピードで進化を続けている。生成AIブームを経て、エージェンティックAIやフィジカルAIが登場し、より大きな基盤技術になる可能性が見えてきた。一方、ハルシネーションや偽情報のような技術的リスク、社会的リスクへの拡大をどう制御するかという問題も浮上している。適切なリスク対策を講じなくてはならないが、イノベーションを止めるわけにもいかない。2つの両立のため、AI法では、違反時の罰金や罰則は設けず、悪質な事案や違法利用が発覚した場合は、国による調査、指導、助言等を行うことと定めた。

もう1つ、制度整備の過程で重視したのが国際協調である。AIの活用やその価値が国や地域を越えるものであることを踏まえると、AIによるリスクに対して日本だけのルールに基づき制度を運用することは実効的ではない。広島AIプロセスの枠組みの提案・運用をしてきた経験を踏まえ、AIガバナンスの構築における国際協調の姿勢を維持し、世界各国との共創モデルの構築に取り組む政府の意思を佐藤氏は改めて表明した。

基調講演2:AI Diffusion: Global Insights and Japan’s Way Forward
マイクロソフト 公共政策担当アジア地域シニアディレクター Marcus Bartley Johns氏

2つ目の基調講演は、マイクロソフトのMarcus Bartley Johns氏が行った。佐藤氏が日本のAI活用の現状を指摘したように、世界全体のAI普及データを見ると、日本のAI普及率は20%未満で、過去半年の伸び率は比較的高いものの、ランキングのトップ30に入っていない状況にある。欧州やカナダ、豪州で40%以上、米国も30〜40%で、日本の普及率とは差がある。

図2:世界各国のAI普及率
出典:マイクロソフト

先行する国との違いを理解するため、Johns氏はシンガポールと韓国の2つの例を紹介した。シンガポールの場合、データセンターや基盤モデルへの投資に熱心な国ではないが、労働人口の約6割が日常的にAIを利用している。背景にあるのは、政府が国民のデジタルスキルの獲得を支援してきたこと、そして市民サービスのデジタル化に投資してきたことだ。一方、韓国の場合は、個人の日常的な利用だけでなく、企業におけるAI導入も進んでいるのが特徴だ。基盤モデルにおける韓国語のパフォーマンスも高い。さらに、2025年の大統領選挙でAIが話題になるなど、国内政治での関心も高い。

今後、日本がAI政策で国際的プレゼンスを高めていくため、Johns氏は3つの提言を行った。まず、AIの普及を進めること。基盤技術への普及を進めることに加え、社会や産業への普及定着を目指すべきだとした。次に、AIを日本の競争力向上に資するものと捉えることだ。他国の成功事例から学び、参考にできる点を取り入れることが求められる。最後に、AI普及の成長余地を追求することだ。全体の普及率は低いものの、一部にはAIを活用し、効果を得ている組織は存在する。その成功事例から学び、自分たちの組織への展開可能性を見極める。3つどれもが、AIが日本にもたらす機会を活かす上で役立つ。

基調講演3:日本における生成AI利用を進めるために 生成AIの普及とその効果推定
国際大学GLOCOM 主幹研究員 田中辰雄

前半の最後を締め括った講演が、2025年3月から6月に実施した生成AIの利用状況を調べた結果からのインサイトの共有である。スピーカーは国際大学GLOCOMの田中辰雄が務めた。

まず、20~60代の有職者の男女62,468人を対象に、業務で生成AIを利用しているかを尋ねた。該当者は6,979人、全体比率にして11.2%になった。そして、時間短縮効果と能力向上効果をどれだけ得たかを算出した結果、総時間短縮効果は、業務分野を問わず、ほぼ週に5時間となり、これは週40時間労働として、12.5%の短縮効果に相当する。一方、総能力向上効果は、平均値で16%程度になった。業務分野別に見ると、研究開発・商品開発、企画・マーケティングがいずれの効果も比較的高い。

そして、この生成AIユーザーを、重複を含め、組織が利用方法を具体的に示した上で利用する「指示受け利用」、ライセンスだけとって利用の仕方は各自に任す「裁量的利用」、個人が自分のライセンスで利用する「自主的利用」に分類し、それぞれの利用率を調べたところ、興味深い発見があった。まず、「指示受け利用」と「裁量的利用」に分け、該当者それぞれが得た効果を調べた。すると、時間短縮効果と能力向上効果の両方で、指示受け利用者の得られた効果が、裁量的利用者のものを上回った。これは、自由に使わせるのではなく、何らかの介入が実現効果に影響していることを意味する。

これを踏まえ、どんな施策が効果的だったかを調べ、社員同士の情報共有、ルールやガイドラインの提供、経営者の強い意志が重要という示唆も得た。業種業態別に見ると、アニメ制作、ゲーム制作、広告制作で時間短縮効果、インバウンド関連業務で顧客満足度向上効果が大きいこともわかった。特に、ゲーム制作では、開発の作業別に生成AI利用による時間短縮効果が3割~6割と高くなっており、作品全体が完成するまでの総時間も、現状で10%程度、5年後には15%程度が削減される見通しである。また、生成AI利用で、アニメ制作(8割)、ゲーム制作(6割)が作品の質、すなわち出来栄えが向上したと認識していることも明らかになった。さらに、生成AI利用開始の決定要因をロジット解析で調べたところ、クラウドを利用している場合、デジタル記録がある場合に、AIの利用を始めやすいこともわかった。

図3:生成AI導入と経営方針との関係
出典:国際大学GLOCOM

パネル討論

ここからの後半では、飯田陽一氏と滝川絵里氏も加わり、国際大学GLOCOM 渡辺智暁の進行で議論を深めた。

  • 株式会社日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット AI CoE HMAX&AI推進センター ワンストップサポートサービス 部長 滝川絵里氏
  • 総務省 参与(前・情報通信国際戦略特別交渉官)飯田陽一氏
  • モデレーター:渡辺智暁(国際大学GLOCOM 主幹研究員/教授/研究部長)

渡辺:まず、自己紹介と前半の3つの基調講演へのコメントをお願いします。

滝川:現在はAI導入の全体を見る立場ですが、新人時代に官公庁へのシステムを導入する仕事を経験しました。その運用保守のチームにいた当時は、アラートが出ると、現場の状況を早く確認しなくてはならないプレッシャーがありました。知識も経験も勘もなかったため、先輩方に助けてもらったことを覚えています。ここ数年、当時の先輩方が退職する年齢に達し、ナレッジが風化する危機感を持つようになりました。今、彼らのナレッジをAIに学習してもらい、現場をサポートするソリューション開発を進めているところです。
 日立全体のスタンスとしては、言語モデルをゼロから開発するのではなく、パートナーの汎用LLMをベースに、業務特化型へと高度化する取り組みを進めています。そして自分たちでのAI活用を重視しています。「事業ライン業務」「間接部門業務」「一般業務」の3つ全てを対象に、ユースケース開発に取り組んでいるのが特徴です。現時点でできたユースケースは約1000件。生成AIだけでなく、エージェンティックAIやフィジカルAIにも意欲的です。

飯田:現在は参与ですが、総務省時代最後の約10年、G7やG20などの多国間交渉に関わってきました。2023年のG7広島サミットでは、デジタルワーキンググループの議長を務め、広島AIプロセスの立ち上げも経験しました。当時の交渉でよく覚えているのが、皆がイノベーションを止めないこと、うまく使うための共通ルールを作ろうとしていたこと、分断を作らないように努めていたことです。当時のEUは非常に厳しい規制を導入しようとしていましたが、各国が互いを尊重し、合意点を見出せたと考えています。
 前半の講演を聞いて実感したのが、日本のAI活用が思うように進んでいないことです。日本のAI法はその名前が示す通り、開発も活用も止めない意思が反映されています。ところが、日本企業はとても慎重です。もっとユースケースを増やし、共有できるようにならねばと思います。

渡辺:滝川さんからの、ベテランのナレッジを引き出すAIソリューションの開発は、今後の発展の可能性を感じます。また、飯田さんからはユースケースを増やしていくべきとの意見が出ましたが、ユースケースの種をどうやって発見するのか。その発見を増やすためのチャレンジはどこにあるのでしょうか。

田中:調査結果によれば、ライセンスを配布するだけでは効果は得られない。具体的な使い方を指示する必要があるとわかります。ベテランのナレッジの話で言えば、退職前にノウハウを残してもらうことを仕組み化する、また、この成果を広く周知させることが必要になると思います。

Johns:知識の伝承は有望なユースケースの一つです。滝川さんたちの取り組みは、次世代への伝承に加えて、個人から組織全体への伝承という性格がありますね。専門知識の民主化とも言えるでしょう。この実現に向けて、解決しなくてはならないのがデータの問題です。AIエージェントやAIアプリケーションがアクセスできるデータがなければ、おそらくすぐに行き詰まる。デジタル形式のデータが整備されているか。これは非常に重要な検討領域です。

田中:データが大事なことは間違いないですね。私たちの調査結果でも、クラウドと社内のデジタル化の2つが生成AI導入の促進要因という結果を示していました。

滝川:AIエージェントの構築では、判断ロジックを記述しなくてはならないのですが、当事者の方々は何がナレッジかがわからない。どこまでが自分独自の知見で、どこからが皆が知っていることなのか。観察のプロによるインタビューの他、様々なテクニックを駆使することが必要になりそうです。

飯田:田中さんの講演で驚いたのは、指示を与えた場合の方が自由に使う場合よりも得られる効果が大きいことです。これは私の予想と正反対の結果でした。ただし、これはAIの活用以前に組織体質の問題なのかもしれない。生成AIの登場で、AIは効率化のための道具から、創作活動や価値創出の道具へと性格を変えました。日本企業にも新しいビジネスを創るような使い方を見出して欲しいところですが、若い人がトップに新しいアイデアを提案しても、実行に移せない閉塞感があります。企業風土を変えないと、AIが普及しても、期待する方向に発展しないのではないか。デジタル化の二の舞になるのではないか。もっと自由な環境で、失敗を許容する方向に変わらないと難しいと思いました。

田中:実は、調査開始時は自由裁量を与える方が利用率や効果が高いという仮説だったのですが、結果は逆でした。自由の何がダメなのかについては、多くの解釈の余地がありますね。検索や翻訳ならともかく、それ以上の使い方はわからない人たちが多い。やってみたらわかることも多い。少しずつ活用が増えると期待していますが、最初はある程度の指示がないと走り出せない。そう私は解釈しました。古い話になりますが、洗濯機が最初に登場した時、誰も買おうとしなかった。ところが、一旦売れ始めると、爆発的に売れ始めた。それと同じで、仕事に使うには、アイデアを自分で試して見つけないといけない。そのきっかけ作りで、初期は指示が必要なのかもしれません。

渡辺:一緒にデータを見た立場から、別の解釈を提供すると、汎用的なLLMそのままではなく、業務に特化したアプリケーションを提供する方が、より大きな期待効果が得られるのではないかとも思います。もう1つ、飯田さんの話に出てきた組織の風土が影響している可能性です。自由にできる風土の企業とそうではない企業を考えたとき、日本は後者の方が多い。使っていいと言われても、何に使っていいかがわからない。その先に進めない。日本の組織がこのまま変わらないと仮定すると、活用が他国に遅れる懸念も出てきます。

滝川:「上からの指示」がどんな文脈でのものか、気になりますね。日立でも生成AIを使える環境は早くに提供しましたが、利用率はなかなか上がらない状況でした。多くの底上げ対策に取り組んだ結果、比較的効果があると実感したものが2つあります。1つは幹部が自身の1日における生成AIの使い方を共有すること。そしてもう1つが、約20名のアンバサダーを任命し、その人たちが中心になって情報発信をすることでした。私も実はアンバサダーの1人です。周囲の上手な使い方を知ることで他人事ではないと認識できれば、洗濯機の話のように、周囲に波及するのではないでしょうか。

Johns:リーダーは、従業員にAIを使うよう指示する代わりに、使い方を示すべきです。毎週、私はマイクロソフト社長がAIをどう使っているかがわかるメールを受け取っています。それから、教育を通して、従業員を強化することも考えるべきです。新しいツールを与えても、ゼロからのスタートでは、どこからどう進めればいいか見当もつかない。プロンプトに入力する質問をどう組み立てるか。どんなプロセスを扱うか。どうやってAIエージェントを構築するか。全て教育の提供を通してサポートできます。さらに、セキュリティ、信頼、データガバナンスの領域は、トップダウンで整えるべきです。特に、一般消費者向けのサービスではなく、組織での利用向けのものを使う場合、従業員が積極的に活用できるよう、ポリシーとルールを適切に設定する必要があると思います。

飯田:開発側の企業や研究機関はもちろん、活用側のエンドユーザーに至るまで、皆それぞれに責任があると認識する必要があると感じています。どんなに技術の進化のスピードが速くても、エンドユーザーへの教育もそのスピードに追随しなければならない。政府や企業が、教育を通して活用のハードルを下げることが必要です。広島AIプロセスの交渉では、全員が協調的なガバナンスを構築しようという思いを共有していました。失敗の許容度が低い日本社会だからこそ、教育が重要です。最初の一歩を踏み出せる環境作りに皆が協力し、少しずつ変えていくしかありません。

佐藤:まず、政府の立場からコメントさせて下さい。AI基本計画の中では「推進する」としたものの、半導体から、データセンター、基盤モデル、アプリケーションまで、全てのレイヤーで、日本が米中を追うような開発体制をこれから整えられるかと言えば、残念ながらその勝ち筋が見えて来ません。むしろ、日本の伝統的な強みである製造業の他、医療、農業、防災など特定分野でのAI活用、ユースケースの開発に注力するべきではないかと考えています。ただ、既存の情報システムやネットワークインフラがある中で、すぐにAIファーストなシステム・体制に変えられるか、といえば、これもなかなか難しい部分があるのではないかと思います。そして、中小・零細事業者に事業でのAI活用を促すには、きめ細かく助言、伴走していけるようなサポートを提供しなくてはならないと思います。ビジネスへのAI導入・活用を拡大するためにも、その支援体制の構築が今後のAI政策の重要テーマになると見込んでいます。一方、個人としての立場では、私自身は翻訳や要約でよくAIを利用していて、同僚も便利さや作業効率の向上を実感していますが、魅力的なAIアプリや関連サービスが次々に提供・更新される中、情報漏洩リスクを考えることもあります。AIの活用法とリスクを巡っては、個人のリテラシー向上も含めて検討しながら、様々な分野・ケースで適切なバランスを追求していかなくてはならない状況だと思います。

渡辺:この機会にぜひ聞いてみたいと思っていたのが、国際情勢を踏まえた日本が目指すべき方向性についてです。製造業へのAI適用が有望だとして、日本以外では、欧州でも中国でも同様の政策を進めています。そこに日本独自の勝ち筋を見つけることができるのか。新しい領域のユースケースを他国よりも速く開拓しなくてはならない。自由に試せる環境がある一方で、ユーザーはセキュリティや失敗を恐れて慎重になっている。この状況で、他国に先駆けることができるのか。例えば、話題のフィジカルAIにおけるガバナンス確立で、遅れを取らないことは可能でしょうか。

飯田:技術の進化に伴い、新しいリスクへの対策を講じる。広島AIプロセスの当時を振り返ると、企業関係者や研究者と政策担当者との間に大きな知識ギャップがありました。政府側から規制しようとしても、わからないことだらけのところに、制御対策を考えることはできません。また、EUのように緻密な規制を作っても、作った端から陳腐化する可能性もあります。できたとしても、それが機能するかは疑問です。日本が他国よりも先見性のある規定を作ることは難しい。今後、日本が貢献できるとしたら、技術的な対策の開発ではないか。その成果を使って、制度や枠組みを作ることはできるかもしれない。いずれにせよ、官民が協力し続けるしかないと思います。広島AIプロセスでは、G7の作った枠組みに賛同する国々が集まり、フレンズグループができました。現在、約60カ国が参加しています。交渉の場で感じた強みが、日本に対する国際的なブランド価値でした。日本人が言うなら大丈夫だろう。日本企業がやるなら、酷いことにはならないだろうという信頼が、賛同した国の間に醸成されていると感じました。
 また、AIの適用はケースバイケースだとも思います。あるユースケースの成功を見て、そのまま取り入れるのではなく、自分たちが置かれている状況に合わせてチューニングする。うまくできれば、新しいユースケースになる。その積み重ねが日本全体へのAI活用の底上げに繋がり、海外にも展開できるのではないか。製造業が持っているような既存の強みと掛け合わせ、より良いユースケースにして展開できるのではないか。次への道筋が見えてくるのではないかと思います。

滝川:ケースバイケースの話に共感します。加えて、AIの出力結果を鵜呑みにしないためにも、UI/UXの設計が重要だと思いました。ユーザーは規則の内容全てを熟知しているわけではない。知らなくても、ダメなことをやらないように設計する。使いやすさを作り込むことで、信頼されるAIができるのではないか。もう1つ、AIに与えるデータの見極めも重要です。例えば、過去のベテランたちが残してくれた記録などの自由記述の文章は、まだ十分に活用できていない。ここは改善の余地があると思いました。

田中:私が考える日本の強みは大きく2つあります。1つはAIに対する拒否感が少ないこと。米国ではAI開発をしばらく止めようという話があったのとは対照的に、日本では比較的AIにフレンドリーです。もう1つは、良い使い方の模倣が得意なことです。個人でも企業でも、共有を惜しまない。これも強みだと思います。

Johns:国際的リーダーとして、日本が検討するべきことを3つ挙げましょう。まず、AI導入とイノベーションの促進だけでなく、ガードレールを伴ったバランスの取れた規制モデルを構築することを考えてほしい。次に、包摂性の視点が重要です。日本は開発援助、国際投資で世界をリードしてきました。AIの国際的な普及と導入を促進する上で、日本の民間セクターと政府には、これまで同様にバランスの取れた政策アプローチが必要になります。最後に、日本語データの可用性の拡大を検討してほしい。これは文化的文脈でも重要です。より多様な言語データの供給を増やすこと。そこに日本のリーダーシップを発揮する機会があります。

佐藤:昨今、画像生成AIでの悪用や権利侵害等が社会問題化していることが、AI活用が進まない一因になっている面があるように思います。AIに対して一定の規制が必要ではないかという世論も認識するところです。規制によるリスク対策も一つのアプローチですが、AIでのイノベーションを阻害しないよう、技術進歩の速いAIに対しては、技術的な対策を通じて、AIを安心して使える環境を整えることも、実効性の観点で重要と考えます。私たちも技術の進化に追随しなければなりません。海外の動向を見ながら、イノベーションとリスク対策が両立する政策立案に取り組んでいきます。

渡辺:振り返ると、飯田さんの「皆に責任がある」という指摘が印象的でした。皆が少しずつ失敗し、失敗を含めた成果を共有することで、利用が進むことを期待したいですね。今日のディスカッションは日本が先導するべき分野のヒントを得られたと思います。

以上

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