近年におけるIT技術の急速な進歩によって、コンテンツ産業において、コンテンツそのもの(あるいは一部)をフリーで提供し、それに付加価値を加えたコンテンツを有料で販売するフリー型ビジネスモデルが普及してきている。しかしその一方で、フリーで提供された無料財が有料財の代替材となってしまうという、いわゆるカニバリゼーションの問題も指摘されている。そこで本研究では、そのようなフリー型ビジネスモデルの有効性を検証するため、音楽産業における無料ネット配信が、有料財であるCDの販売数にどのような影響を与えているか、内生性に配慮した実証分析によって明らかにする。

分析の結果、無料ネット配信視聴者数はCD販売数に有意に正の影響を与えており、その弾力性は約0.19であった。また、動画時間によって区別した分析を行った結果、長時間無料ネット配信では有意に正の影響が見られた一方で、短時間無料ネット配信では有意な影響がなかった。さらに、無料ネット配信を行うコンテンツの方が、行わないコンテンツよりも約13%、CD販売数が多いことが分かった。以上のことから、曲の多くの部分を公開する長時間の無料ネット配信はCD販売数を増加させるため、企業はそのような販促型フリー戦略をとるべきといえる。

著者 山口真一
掲載先 情報通信学会誌
リンク https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/35/3/35_23/_article/-char/ja/
出版社・発行元 情報通信学会
ページ数 12ページ
執筆年月日 2018/01/26
  • totop