デジタル時代のマーケティングとイノベーション

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概要

「デジタル社会において新技術・新事業をどうマーケティングすべきか?」をテーマに、経済産業省産業技術環境局技術政策企画室による「平成31年度産業技術調査事業(国内外の産業技術をめぐる動向の調査)研究会」において発表を行いました。この度、同省ウェブサイトに調査事業報告書が掲載され、講演概要が収録されました。主なポイントは次の通りです。

  • マーケティングとは、消費者の求めているニーズを調査し、供給・販売の⼿法を決定し、流通を円滑にすることであるが、その定義は多様である。コトラーはマーケティングの定義の変遷を、1900~1960年代のマーケティング1.0から2010年代のマーケティング4.0まで、4つの区分に分けて説明を行っている。
  • 2010年代のマーケティング4.0では、SNSの台頭により一般人がインフルエンサーになりうるなかで、個人の自然な情報発信を促す「人間中心・自己実現のマーケティング」が行われている。サービス化の進展に伴い、あらゆる企業活動が Customer Valueの構成要素となりつつあり、Customer Valueの拡大のためのマーケティング⼿法として、データ利活⽤やパーソナライズなどが台頭している。
  • 行動データ等から読み取った嗜好性から消費者をセグメントにわけ、ABテストを繰り返すことにより、コミュニケーションの判別ルールのセットをつくることができる。近年、様々な消費者データから行動を推測し最適なサービスの提供が模索されており、商品のレコメンデーションはその最たる例として挙げることができる。
  • 「モノからコトへ」という価値観の移行が注目を集めているが、これは「理性<感性」を表すものでもある。マーケティング活動では、新技術・新製品のスペックを 消費者に提示するよりも、消費者の共感を喚起するためのコミュニケーション(ビジョンを語る/ストーリーで伝える/ビジュアルで示す/価値観に寄り添った価値 を示す/建前ではなく本音で接する)が重要となる。誰もが顧客であり開発者でも ある価値観が共有されつつあり、個人の感性を起点とした開発・販売(プロダクトアウト2.0)を社会にぶつけ、共感する人々と協働していくことが大切である。
  • デジタルマーケティングはデータを通じて行動・嗜好傾向を取り込み、マーケティ ング活動の個人化、最適化をもたらした。一方、過去のデータに基づき最適化されたデジタルマーケティングには、新たなものに対する人々の受容性を低下させる恐れがあると考えられる。そのため、消費者・開発者の双方に意外性や新規性をセンシングする力、発見した情報を発信・交換するインタラクションの力が求められる。

※発表資料のフルバージョンは以下のPDFよりダウンロードしてご覧いただけます。

イベント名 平成31年度産業技術調査事業(国内外の産業技術をめぐる動向の調査)研究会
主催者 経済産業省 産業技術環境局 技術政策企画室三菱(運営:三菱URJリサーチ&コンサルティング)
開催日 2019年12月18日

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