Innovation Nippon 2024 報告書「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査」
インターネットとSNSの普及により、一人ひとりが自由に情報を取得・発信することが可能となり、人類総メディア時代となりました。この変化は多くの利点をもたらすと同時に新たな問題も引き起こしており、偽・誤情報が広く拡散される問題は、特に社会全体に深刻な影響を与えています。偽・誤情報は、政治、経済、公衆衛生など、社会のあらゆる分野で混乱を引き起こし、個人の判断や行動を誤らせる可能性があります。また、偽・誤情報は社会的な対立を深刻化させ、コミュニティの結束を弱めることもあります。
その対抗手段の1つとして、ファクトチェックと教育啓発の重要性が世界中で高まっています。ファクトチェックは、公平かつ客観的に情報の正確性を評価することで、偽・誤情報の拡散を防ぎ、公的議論の質を高めることを目指しています。また、教育啓発の促進は、人々の偽・誤情報に対する免疫力を高めることができます。しかし、ファクトチェックがどの程度効果的であるか、どのような形態であれば人々により届きやすいのか、人々はどのような情報源を信頼しているのか、人々は信頼できる情報にアクセスするためにどのような行動をしているのか、教育啓発にどのような効果があるのか、ファクトチェッカー養成に必要なスキル・手段は何かなど、本分野における実態の調査、及び、エビデンスベースの適切な改善策の提案はほとんどなされていないのが現状です。
このような背景から、本調査研究では、偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発といったテーマで実証研究を行いました。本調査研究によって、情報の信頼性と情報環境の質を向上させるための適切な施策や、ファクトチェッカー養成講座開発、教育啓発プログラムの開発などに重要な知見をエビデンスベースで提供し、本調査から導かれる提言をまとめました。
- わが国においても偽・誤情報は大きな悪影響をもたらしており、対策の更なる推進が不可欠
- 適切な情報検証の啓発と、情報検証行動を後押しするような機能の開発・実装
- 感情を揺さぶられるような情報の危険性の啓発と、そのような情報に気づかせる機能の開発・実装
- 直接の会話による偽・誤情報の拡散にも注意するように啓発
- インターネット上の情報や偽・誤情報に関する啓発(メディア情報リテラシー教育)を、インターネット上の動画などの需要のある方法で推進
- わが国におけるファクトチェッカー養成講座の作成とファクトチェッカーの育成が必要
- ファクトチェックは効果が高いため、ファクトチェックを支援する技術の開発推進、ファクトチェック結果を優先的に表示する工夫等が求められる
- 災害、医療・健康、政治についてのファクトチェックを優先的に行う
- マスメディアによるファクトチェックへの参加が期待され、それを促すインセンティブ設計も必要
- 生成AIが偽・誤情報環境に与える影響を詳細に調査したうえで、適切な対策方法を検討・開発・実装していく
名称 | Innovation Nippon 2024 |
形態 | 委託研究 |
プロジェクトオーナー | 一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA) |
プロジェクトリーダー | 山口真一 |
プロジェクトメンバー | 山口真一 渡辺智暁 逢坂裕紀子 谷原吏(立命館大学産業社会学部准教授/GLOCOM客員研究員) 大島英隆(GLOCOM客員研究員) 井上絵理(GLOCOM主任研究員) 田邊新之助(GLOCOMリサーチアシスタント) |
活動内容 |
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実施期間 | 2023年11月~2024年3月 |
関連リンク、関連成果物
- 日本ファクトチェックセンター(JFC)調査研究ページ
https://www.factcheckcenter.jp/research/ - 朝日新聞「偽情報の拡散「口コミ」が48%、SNSより多く 国際大など調査(2024年4月16日)
https://digital.asahi.com/articles/ASS4J14TXS4JUTIL00ZM.html - NHK NEWS WEB「SNSなど拡散された偽情報・誤情報「正しいと思う」に半数の人」(2024年4月16日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240416/k10014423881000.html