国からの提供データを活用したEBPM推進をめぐる自治体の現状と課題
―杉並区におけるETC2.0プローブデータを活用した交通安全対策事例―
要旨
日本の自治体では、合理性、パフォーマンス、資源、アカウンタビリティの最適化を高めるためにEBPM(根拠に基づく政策立案)の導入が加速している。その先進事例として国から注目されている杉並区において、交通政策を担当する自治体職員へのヒアリングを実施した。本研究の目的は、自治体によるEBPMの推進に対して、先行研究では指摘されてこなかった国と自治体との関係と、国からの提供データを活用した自治体職員視点のEBPM推進をめぐる取り組みや課題認識を明らかにすることである。得られた知見は以下の通りである。第一に、データ分析・提供に対する国からの支援の影響は自治体にとってEBPMの方針を左右するという点で大きな意味を有している。第二に、国と自治体ではデータを通じて明らかにしたいことに違いがある。第三に、杉並区は質的なエビデンスもEBPM推進のための論拠として採用することで、より良い政策の実現を目指している。
キーワード
EBPM、交通政策、ETC2.0プローブデータ、質的なエビデンス、杉並区
謝辞
調査にご協力いただいた杉並区都市整備部土木計画課の皆さまに感謝申し上げます。本論文は2023年度日本計画行政学会全国大会の報告を基に追記修正を行ったものです。全国大会にて質問意見をくださった方々に感謝申し上げます。
2025年1月発行