改正著作権法はAI・IoT時代に対応できるのか?
―米国の新技術関連フェアユース判決を題材として―
2019年1月から施行される改正著作権法の最大の目玉は、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」であるが、新設される柔軟な権利制限規定によって合法化されるサービスのほとんどは、米国ではかなり以前から合法化されている。この差をもたらすのが著作物の利用に配慮した著作権法の権利制限規定。わが国の著作権法はこの権利制限規定を個別具体的に定めているが、アメリカでは権利制限の一般規定として利用目的が公正(フェア)であれば、著作者の許可がなくても著作物を利用できるフェアユース規定を採用している (以上1)。
時代の変化に柔軟に対応できるフェアユース規定の解釈によって、米国の裁判所は新技術・新サービスにフェアユースを認める判決を下してきた (2)。必要の都度、個別権利制限規定を追加する方式では、IOTや第4次産業革命など新たなデジタル技術の発展に追いつけないため、改正著作権法は三つの柔軟な権利制限規定を新設した (3)。これらの条文によって可能となるサービスは、米国ではすでにフェアユースが認められたサービスで、しかも、フェアユース規定をバックにサービス開始した米企業に日本市場まで制圧されてしまったサービスである。このように10年先取りするどころか10年後追いする法改正でAI・IoT時代に対応できるのかは疑問である (4)。
こうした後追いの対症療法的改正に終始するところに、権利者の利益代表委員が半数を占める審議会でコンセンサスを得なければならない政府立法の限界がある (5)。自民党はより前向きな提言をしていて、その提言を反映していない文化庁の改正案を了承する際に党内でも激論となった。このため衆参両院とも「著作権制度の適切な見直しを進めること」という附帯決議を付けられたが、政府立法による見直しが進まないようであれば議員立法による見直しも視野に入れるべきである(6)。
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2018年8月発行
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