業務時間の短縮による経済効果は年間4.2兆円、5年後推計は11.5兆円。コンテンツや観光産業に有望性
背景・目的
本調査はAI利用を後押しするためにどのような政策が有効になるか、その判断材料を大規模アンケート調査などによって集めたものである。
生成AIの適切な利用が経済的に大きな恩恵をもたらしうることについてはすでに多くの指摘がある。先に成立したいわゆるAI法においても、AI技術の活用が研究開発と並んで推進策の対象とされ、それによって「国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与」することを目的として掲げている。
一方、日本は国際的に見て生成AI利用が進んでいるわけではなく、欧米に比べて利用率が低いとする調査もみられる。AI利用を促進する上ではどのような政策が有効・有望であるかについては諸説あるが、実証研究による細かな判断材料が豊富というわけではない。
そこで、国際大学GLOCOMでは、従来からのAI関連の研究に関する知見を活かしつつ、今後の政策の判断材料となるよう、生成AI利用の実態と効果、利用促進・阻害要因などについて大規模アンケート調査などをもとにとりまとめた。本調査が日本の生成AI利用策の策定・実施に少しでも貢献することを願う。
主な結果
生成AI利用の経済効果・その他の効果
- 生成AI利用は、時間短縮の効果だけに着目しても、利用者におおよそ週に5時間程度の恩恵をもたらしていると思われる。(1)
- これをGDPに換算すると4.2兆円の経済効果となる。(2)
- 5年後の利用率を尋ねると平均して2倍程度との予想である。これらを元に経済効果を推計すると11.5兆円となる。(3)
- 既存の研究では、業務での生成AIの利用率などについて、専門家が推定して効果を推計していたところ、本調査ではアンケート調査でより当事者性の高い回答者からの回答を集計して推計に用いている点で手法的にも優れたものとなっている。(4)
- 時間短縮効果と比べて規模の数値化は困難なものの、生成AI利用は従業員の満足度やサービスの品質向上、顧客の満足への貢献など、様々な効果を持っている。(5)
有望な領域の特定(産業・職種)
- 特定の職種(企画・マーケティングや研究開発)、業界(コンテンツ産業、インバウンド関連産業)などが相対的に高い利用率と利用効果を呈するため、こうした領域での利用を伸ばす支援策は比較的効果を挙げやすい可能性がある。(6)
生成AI利用の推進策
- 促進・阻害要因としては、デジタル化、新技術の採用への積極性、経営層の強い意志表示、人材不足などが比較的多くの文脈で影響力を持つ事がうかがえる。(7)
- 利用の効果を大きくする要因として、会社が使うべきAIと使うべき業務内容を具体的を指示することが多くの文脈でみられる。現在のところ従業員の創意工夫にまかせるより具体的な指示があったほうがよい。(8)
- 経営層による組織内からの環境整備、政府の政策による組織外からの支援いずれであっても、これらの要因を念頭に施策を設計することが、有効性につながる可能性がある。(9)
- 例えば、すでにある程度普及しており、利用効果が確認できる用途について関連する企業やその担当者などに紹介し、検討を促すことが考えられる。(10)
- デジタル化の加速支援、人材不足を緩和するための支援員派遣制度や研修制度なども、有効な政策になる可能性がある。(11)
- 会社が使うべきAIと使うべき業務を具体化すること、その設計のためのベストプラクティス集やアドバイス集などを業界団体や政府、支援団体などが提供すること、なども有効な施策になる可能性がある。(12)
| 名称 | 日本における生成AI利用を進めるために |
| 形態 | 委託研究 |
| 委託主 | 日本マイクロソフト株式会社 |
| プロジェクトリーダー | 渡辺智暁 |
| プロジェクトメンバー | 渡辺智暁 田中辰雄 小林奈穂 董芸 境真良(国際大学GLOCOM 客員研究員) 逢坂裕紀子 山内萌 |
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| 実施期間 | 2025年3月~2025年6月 |