2020.05.11

DISCUSSION PAPER_No.19(20-005)「流言は知者に止まる -もうひとつのフェイクニュース抑制策-」

流言は知者に止まる -もうひとつのフェイクニュース抑制策-

田中辰雄(慶應義塾大学経済学部教授)
山口真一(国際大学GLOCOM准教授・主任研究員)
菊地映輝(国際大学GLOCOM講師・研究員)
青木志保子(国際大学GLOCOM主任研究員)
渡辺智暁(国際大学GLOCOM教授・主幹研究員)
大島英隆(国際大学GLOCOMリサーチアシスタント)
永井公成(国際大学GLOCOMリサーチアシスタント)

 

要旨

フェイクニュースの中には、完全な虚偽ではなく、一握りの事実を含むがひどく偏った解釈で読者をミスリードするものがある。このような高バイアス型のフェイクニュースの場合、わずかではあるが事実を含むため、ファクトチェック機関での拡散阻止が難しい。本稿ではその代替策として、ネット上の識者による拡散阻止を考える。古来「流言は知者に止まる」とされた方法で、その実例をあげるとともに、アンケート調査で実現可能性を考察した。アンケート調査によれば、信用できる識者の言うことを聞いて虚偽と気づくことはありえる。また、その識者が本人にとってリアルの知り合いでも、面識はないがネットで情報発信している人の意見でも変わらない。ネット上の人でも信用できる人なら拡散を止められるという結果は注目に値する。ただし、実際にはネット上の信用のおける識者の数が少ないため、この方法による拡散阻止はあまり機能していない。ネット上の識者を増やすためには、極端に走りがちなネット上に中庸な言論空間を増やすことがひとつの方策になるだろう。

キーワード

フェイクニュース、流言、ソーシャルメディア、ツイッター、フェイスブック

JEL Codes

D8, D83, D91 L82 Z18

 

2020年5月発行

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